「硬すぎて無理です」と話す選手も

 チャンドラーの強みについて、宇野さんは次のように語ります。

「個人的な見立てになりますが、まず前提としていい木材でバットをつくっているということがあるはず。硬くて反発力の高い、いいメイプルが育つ森林を押さえているんだと思います。その上で彼らはきわめて厳格な基準で加工をしている。チャンドラーのバットが耐久性が高く、めったなことではへこまないのは、そうした理由があると思います」

 もっとも、これだけ硬いバットを使いこなすのは容易ではありません。

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「しなりがないので、芯を外したときの衝撃は大きい。大谷選手ですら、手がしびれて顔をゆがめる場面がありますから。日本人の若手スラッガーにチャンドラーのバットを買っていただき、後日感想を聞いたところ『硬すぎて無理です』と話していました。このバットで結果を出すのは、かなりのフィジカルとテクニックが求められると思います」

大谷ですら扱いが難しいという それだけ、使いこなしたときのリターンが大きいということか ©文藝春秋

 実際、当初は日本人でチャンドラーを使う選手は多くありませんでした。しかし近年は、巨人の坂本勇人や岡本和真らを中心に普及が進み、打席で目にする機会が確実に増えています。

 とにかく硬く、底知れぬポテンシャルを秘めたチャンドラー。2025年になると先端が細く、グリップ側が太いトルピード(魚雷)バットが一躍ブームとなりますが、大谷は脇目もふらずチャンドラーでホームランを量産しています。日米を盛り上げる大谷の“ショータイム”。その陰には、素材を知り尽くした家具屋さんが生み出したバットがあったのです。

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