まいばす対トライアルGO、それぞれに死角は?

 セブンに限らず大手3社はフランチャイズ店舗の比率が高く、各地のオーナーの理解や出費がないと、DX化・コスト削減の一手を打てない。その間に、直営店主義で経営の意思決定が早いまいばすけっと・トライアルGOの出店が進めば、低価格についていけなくなったコンビニは次々と閉店を余儀なくされ、空き物件はそのままマイクロスーパーの草刈り場となってしまう。

コンビニ各チェーンはマイクロスーパーとの戦いに、少々分が悪い?(筆者撮影)

 現状、棚2~3スパンでまばらに野菜・肉を置く程度の裁量しかない既存コンビニと、イオンやトライアル・西友の既存供給網を使って、安くて新鮮な商品を店中にぎっしり置けるマイクロスーパーとの競争では、需要への応え方が違う。

 さて、そうなればまいばすけっと・トライアルGOが競合していくわけだが、どんな戦いになっていくのか。

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 まいばすけっとは既存店が2025年上期(3~8月)の売り上げが6.5%増と絶好調だ。今後は利益率が高いトップバリュ商品の比率向上がポイントになるが、そもそもトップバリュの「無機質さ」が、先述したような「都民の罰」と言われる原因となっている。

 対策として、同じトップバリュの中でも付加価値型の「グリーンアイ」、スタンダードな「メインストリーム」、低価格の「ベストプライス」と棲み分けて多様性を出してはいる。今後、さらにトップバリュの魅力をいかに高められるかが焦点だが、ある程度の安さを担保できるならば「都民の罰」路線を突き詰めた方が良いと筆者は考える。

 トライアルGOは、親会社が西友の買収で連結純利益が5億円(前期比96%減)と影響が出た。買収にかかった「のれん償却」などが決算を下押しするという懸念からか、株価も急落した。経営のネガティブ要因を店舗の実販で跳ね返そうにも、ディスカウントに頼ってきたため利益率を稼げず、執筆時点での直近データである2025年7~8月は既存店の売り上げが前年を越えていない。

 DXによるコスト削減が強味ではあるものの、それ以前に「商品を必要とする買い物客が訪れる」「利益は確保する」という小売業の基本が守れなければ、意味がない。

 トライアルはPBが「安値頼み」の印象があり「消費者テストで支持率80%以上」という付加価値で販売実績を挙げた西友のPB「みなさまのお墨付き」導入などで、「安くなくても買ってもらえる」テコ入れも必要になってくるだろう。

トライアルのPB商品たち。一部商品は店によって価格が違うものの、ウェットティッシュ、食パンは100円以下(筆者撮影)
西友のPB「みなさまのお墨付き」。こういった高付加価値PBの販売が、トライアルGOで今後必要となるだろう(筆者撮影)

 何より、まいばすけっともトライアルGOも、コンビニ・スーパー業界では新参の部類だ。ブランドが浸透していない地域への出店という難題に、取り組んでいくわけで、店舗数・売り上げではまだ「巨象と蟻」ほどの大差があるコンビニ市場をいかに侵食していくのか。もはや大型・中型スーパーの出店余地がない首都圏に限った話ではあるが、ひそかな「業界間抗争」を見守りたい。

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