なんとも不思議な光景というか、もはや神秘的ですらある
駐車場のすぐ先に素掘りのトンネルがある。
しかし、これはまだ目的のトンネルではない。トンネルの脇には“燈籠坂大師入口”と掘られた石碑が建っている。やや整った形をしているが、内部にはツルハシのような先が尖ったものによる掘り跡が生々しく残る。
短いトンネルを抜けて右に曲がると、いよいよ燈籠坂大師の切通しトンネルが姿を現す。
高さ数十メートルまで山の斜面が削り取られ、深い切り通しになっていて、その先がトンネルだ。
トンネルは目測で10メートル近い高さがあり、大型車が通る高速道路のトンネルよりもずっと高い。センターラインがない狭い道幅に対して、とんでもない高さだ。
縦に長いというだけではなく、とても違和感があるのだが、その正体は角ばった形状だった。トンネルは通常、山からの圧力を分散して強度を高めるため、丸みを帯びたアーチ構造をしている。しかしこの燈籠坂大師の切通しトンネルは、長方形に近い断面をしているのだ。長方形の断面はおよそトンネルにはほど遠く、なんとも不思議な光景というか、もはや神秘的ですらある。
深い切り通しと高いトンネルを歩いて抜けると、どこかひんやりとした空気が漂う。切り通しとトンネルが深すぎて、地下に近いのかもしれない。
トンネルを抜けた先で左手の階段を登れば、トンネルの名称になっている東善寺の燈籠坂大師堂がある。弘法大師が諸国行脚の際、腰を休めたという言い伝えが残っており、弘法大師空海が祀られている。トンネルは、東善寺の境内にあたる。



