独特すぎる見た目をしている理由
燈籠坂大師の切通しトンネルは壮大で独特な見た目をしているが、これにも理由がある。道やトンネルというのは、人が莫大な労力と時間をかけて造るものなので、理由もなく造ることはないし、構造や設置物にも必ず理由があるのだ。
このトンネルは、明治~大正頃に、近くにある鋸山の石切り技法を用いて造られた。
当初は2メートルほどの高さしかなく、今のトンネルの上部だけが存在していたという。トンネルが完成したことにより山越えの苦労が解消されたが、トンネル前後のアップダウンが激しかったため、その問題を解消しようと、昭和初期頃に地元住民によって切り下げ工事が行われ、現在の姿になったとされているのだ。
そのためトンネルをよく見ると、上部4分の1ほどとその下で、断面の形が異なっている。
上部は最初に造られた部分で、幅員もやや狭く正方形に近い形。その下は昭和になってから切り下げられた部分で、上部に比べて何倍も高く、幅も広くなり若干の丸みを帯びている。
これが、燈籠坂大師の切通しトンネルが独特すぎる見た目をしている理由だ。
この話を知り、私はある疑問を抱いた。
アップダウンを解消するために掘り下げたのは分かるが、掘り下げすぎではないか?
トンネル部分だけ前後の道よりも低くなっていて、緩やかではあるが、逆にアップダウンが生じている。それに、天井の高さも十分すぎる。仮に大型車が通るとしても、ここまで高くする必要はない。また、燈籠坂大師堂は山の上にあり、トンネルが掘り下げられたことで、大師堂まで上がる階段が長くなってしまっている。
これまた何か理由があるに違いない……。考えてみると、石切りの技法で造られたトンネルであることを思い出した。ひょっとしたら石材を使用する目的があり、そのため必要以上に切り下げられたのではないだろうか……。




