そうすることで終わりの見えない治療が先に進んでいると思い込んだり、忍び寄る「死」というゲームオーバーをリアルに受け止めないように精神がストッパーをかけていたのかもしれない。

ベッドの上に化け猫が見えて幻覚に気づく

夢と現実の区別がついていないときに自分がどんな風に振る舞っていたのかは正直まったくわからない。ひとつはっきり覚えているのは、ベッドの上に「化け猫」(『魔法陣グルグル』に出てくる「長い声のネコ」みたいなやつだった)が見えて、看護師さんに「そこ! そこ!」と指差したことだ。

もちろんそこには実際には何もおらず、自分もさすがに化け猫なんてものが見えるのはおかしい、と気付いた。看護師さんも困惑していて、そのとき明確に「あ、俺って今幻覚が見える状態なんだ」ということを自覚した。

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自分の滑稽さに思わず笑ってしまったのだけど、看護師さんからしたら深夜に急に騒ぎ出したと思ったら笑い出す患者を見てだいぶやばい状態だと思ったんじゃないだろうか。まあ実際いろんな意味でやばい状態だったのだけど。

たろちん(たろちん)
ゲーム実況者、ライター
1985年10月14日生まれ。本名は大井正太郎。2008年、ニコニコ動画で「たろちん」としてゲーム実況を開始。Webニュースサイト「ねとらぼ」のライター・編集者を経て、現在フリー。お酒をこよなく愛する人間だったが、2022年に「重症急性膵炎」を患い膵臓の3分の2が壊死。現在は生涯禁酒の身。noteでも闘病体験やその後の生活を綴っている。
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