2023年に実父からの性虐待被害を実名で告発し、29歳だった弟の自死も公表。社会に衝撃を与えた塚原たえさん。現在は一般社団法人の代表として被害者支援の啓発活動を行う傍ら、YouTubeチャンネル「たえの黒電話」を開設するなど、活動の幅を広げている。自身の壮絶な経験と、多くの被害者と向き合ってきたからこそ見えてきた「本当に必要な支援」の形とは。(全2回の2回目/はじめから読む)
「たえの黒電話」を開設
塚原さんが新たに始めたのが、YouTubeチャンネル「たえの黒電話」だ。このユニークな名前には経緯がある。
「最初は、『おたえが吠える』というチャンネル名だったんです。それだと私がしょっちゅう吠えてるみたいじゃんって思って」と塚原さんは苦笑いする。最終的に「たえの黒電話」に落ち着いたのは、「私が昭和のおばちゃんという感じなので。そこからの連想で、黒電話が出てきたんです」という。
53歳の塚原さんは、このチャンネルを通じて幅広い相談を受け付けている。
「年の功というか、世の中の酸いも甘いも全部知っているので、嫌というほど見てきているので、どんな内容でもお話聞きますよ、という電話なんです」
「声を上げないことが悪いことでもない」
番組では、塚原さんが最も伝えたいメッセージについて語られた。それは、性被害者に対する社会の期待や圧力に関する重要な指摘だった。
「声を上げないことが悪いことでもないし、上げられなくなったとしても悪いことじゃない。声を上げられる人が、上げられるタイミングで上げればいい」
この発言の背景には、多くの被害者が置かれた厳しい現実がある。
「声を上げて疲れてしまった方、どうしても性被害のことから抜け出したい、もう忘れたいと途中で思うようになり、日本から出て行ってしまった方もいらっしゃる」

