上司や同僚には事情を話してあるので大変ですねと気遣ってくれるが、急に休んだり早退したりすることが何度もあると、やはり申し訳ないと思ってしまう。
「母の状態が悪化しても特養に入れなかったら、9時~18時まで勤務する正社員では介護と仕事の両立は無理だろうと不安になります」
休職して介護に専念するか、最悪の場合は介護退職することもあり得ると危機感を覚えてしまう。
「顔つきがおかしく、能面のような感じなんです」
「母の状態は1年前と比べると明らかに体力が落ちています。ボケの症状が出てくる頻度も増えていますし」
指の力が落ちたため、カーディガンのボタンを留めるのに3分もかかるとか、畳に座った状態で靴下を履こうとしたら横に倒れてしまい自力で起き上がれないといったことが何度かあった。
「ほぼ正常な受け答えができるときもあるが、どういう訳なのか今どこにいるのか理解できないこともある。こういうときは顔つきがおかしく、能面のような感じなんです。話しかけても反応がありませんでね」
ゴキブリがいるとあちこちに殺虫剤を撒いたり、魔法瓶に話しかけたりしている姿を見ると悲しくなってしまう。
「介護には準備期間がない。ある日突然やってくる。そこが出産や子育てと違う。親が80歳近くになったら身内で役割分担や金銭的なことを話し合っておくべきですよ」
自分の親には持病はなく元気でやっている、支援や介護はまだ先。そんなふうに思っていると、いざ介護が必要になったとき、何をどうしたらいいのか、どこに相談すればいいのか混乱することになる。
50代サラリーマンにとって介護は待ったなしなのだ。