市ヶ谷「そば処瓢箪」の跡地をみて思わず涙が
次に向かったのは市ヶ谷である。1990年~2020年の間、自分がもっとも立ち寄って食べていた立ち食いそば屋があった。JR市ヶ谷駅からすぐのところにあった「そば処瓢箪」である。創業は昭和59(1984)年。初めは映画好きな男性店主が、平成2(1990)年頃からはご夫婦で経営していた。
天ぷらは自家製。つゆはかつお節などの出汁を引いた本格的なもので、濃い目の返しと一体になって香りがよい。そばは「紀州屋製麺」の茹麺だった。とにかくバランスがよい一杯だった。
人気は「かき揚げそば」や「ごぼう天そば」。天ぷらはカリカリで、つゆに浸すとさっと溶ける特徴的なタイプ。
「ミニ牛丼」、「ミニカレー丼」、「ミニそぼろ丼」、「たき込みご飯」などのサイドメニューが秀逸だった。この記事を書いていても涙が出そうだ。その位通っていた。
「そば処瓢箪」は令和5(2023)年3月31日に閉店。令和7(2025)年10月10日に跡地に行ってみると、手前にあったビルは撤去され、新たな建物が建築中だった。
そして、そのとなりに店はあったのだが、着いてみるとそこは1台だけの駐車場に変貌を遂げていた。切ないを通り越して、すでに無我の境地だ。
5坪もないようなこの場所で、ご夫婦はおいしくて素晴らしい味を毎日、提供してくれていた。仕事で失敗した時も、あの味がいつも癒してくれた。「そば処瓢箪」の跡地をみた自分の感想はこれ。
「旨い・速い・安い・感謝、心に残る味だった。Thank you so much」




