閉店した虎ノ門「峠そば」の跡地は工事現場のGATEに
最後の訪問地は虎ノ門だ。虎ノ門界隈は今再開発の真っ只中。ここに立ち食いそばの名店「峠そば」が開業したのは平成5(1993)年頃だった。もともと神保町のすずらん通りで「おばこ」という店を昭和44(1969)年からやっていたのだが、立ち退きでこちらに移転してきた経緯がある。
自分が虎ノ門によく通っていたのは平成の頃。一帯は小さな飲食店、長崎ちゃんぽんの店や鰻屋などが並んでいた。昼になるとオフィスワーカーがこぞって行列を作っていた。
つゆは鰹節中心の芳醇な香りにキリッとした返しがよい。天ぷらは自家製で注文都度揚げ。店前5メートルから胡麻油の香りが漂うほどのインパクト。そばは「むらめん」の生麺を使用していて、こちらもキリッとしたそばであった。
虎ノ門の「峠そば」は令和5(2023)年1月19日に閉店した。しかし、今回紹介した他の店とは違い、令和6(2024)年7月17日に茅場町で再開を果たしている。いまも店主の柏木秀之さんは頑張っている。
さて、跡地はどうなっているのか。令和7(2025)年10月10日に虎ノ門を訪れてみた。すると、巨大なビルを建築中だった。道路にあったマンホールの位置などから、「峠そば」は現在の工事現場のGATE右側あたりにあったようだ。再開発後に立ち食いそば屋が入店するケースは極めて少ない。春日にある「豊しま春日店」位じゃないかと思う。
再開発はしかたない。しかし、入店する店は同じ大資本の飲食店ばかりではなく、もっと多彩にしてほしいと願っている。「峠そば」の虎ノ門跡地をみた自分の感想はこれ。
「名店は移転しても決してなくならない。Never give up」
閉店後の立ち食いそば屋の跡地は他にも…
他にも浜松町の「蕎麦たつ」の跡地は別の外食以外の会社が入っており、新御徒町の「アヅマ」の跡地には綺麗なマンションが建っていた。
昭和は狭いスペースでどうにか店をやって稼いでいこうと皆考えていた時代。そんな場所でやれるのは立ち食いそば屋くらいだろうし、ビジネスとしては手軽にスタートできたわけである。そうした時代が終わりを告げているのかもしれない。しかし、立ち食いそば屋がある町は庶民的で活気があるいい町だと思う。自分にとっては立ち食いそば屋が癒しの場であった。どうかその灯は消えないでほしいと思う。



