文春オンライン

日本ハム・中島卓也のファウルを数える“タクメーター”誕生秘話

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/08/12
note

「意味のあるファウルに注目」

 中島選手本人がファウルを意識しだしたのは2015年からだと言います。前年、初の規定打席に達してレギュラー獲得に名乗りを上げ、すでに守備にはチームから高い評価がありました。課題はバッティング。レギュラーに定着するにはどうすればいいのか。ヒットを量産するタイプではないことは自分がよくわかっている。ならば、追い込まれてからも根気よく粘れる選手になれば、自分がそんな働きをすれば、チームの勝ちにつながるはず。一軍で生き残るための中島選手の知恵と工夫と努力でした。

 元々の意識の中にあった粘りのバッティングがチームの勝利に貢献するような形になるまで時間はかかりませんでした。どちらもフル出場した2015年と2016年のファウル数は、それぞれ599本と759本。スタンドにはファウルを数える応援ボード「タクメーター」が登場。本人に「ファンにファウルを数えられる選手なんて珍しいですよね?」と聞いた時、「おかげで数を知ることができるようになったし、作ってもらったことでより意識もするようになりました」と笑顔で話していました。タクメーターは中島選手も公認です。

 今年、中島選手のファウルは内容が変わってきていると感じます。例えるなら、以前は、草食動物が肉食動物ににらまれ何とか逃げようともがく姿だったのが、今は立場逆転、肉食動物が獲物を仕留める為にじわりじわりと近づいていっているようなイメージ。相手にプレッシャーをかけ、昨年よりも仕掛けるのが早くなり、ヒット、さらに打球の強さが目立つようになってきました。ファウルの数は減っています。

ADVERTISEMENT

日課となっているスコアシートへの記録 ©斉藤こずゑ

 タクメーターの彼女の意識も変わります。

「昨年あたりから意味のあるファウルに注目しています。この粘りがどのくらい点数や出塁に絡んだか。今は総数しか表現できていませんが、もっとフィットした表現の仕方があるんじゃないかなってずっと考えていて、これは今オフの私の課題になりそうです」

 中島選手の変化によって、タクメーターの形も変わるのかもしれないですね。

 はじめは、守備を堅実に、次は打席で粘れる選手に、そして今はこの二つに加えてさらに打てる選手へと。伸びしろって人によっていくらだって伸びるもの。自分と向き合い、何をすべきかを考えて努力をする。評価されることを求める前に、そんな当たり前のことを自分は出来ているのか、ちょっと真面目に考えたりして。

※「文春野球コラム ペナントレース2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/-/8365でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

日本ハム・中島卓也のファウルを数える“タクメーター”誕生秘話

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!