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取材を終えた仲代さんは「これ、いただいていいですか?」と、こちらが用意した過去の雑誌記事のコピーを持ち帰った。その中にはまだ新婚時代の仲代さんと妻・恭子さんを新居で撮影したグラビアページがあり、「夫のこと」と題した恭子さんのエッセイがあった。
忘れっぽいのは有名で……
〈『野獣死すべし』が封切られたので、このところ『仲代さんには、実際にあんな冷酷な面があるんですか』と言う質問にたびたび出あいます。(中略)妻から見ると、当然のことながら仲代はやはり仲代で、(中略)家庭内での仲代が野獣…の主人公等とは、良い意味でも悪い意味でも、まるで正反対の人柄であるだけに、その豹変ぶりが妻としては一層心楽しく感じられるのです〉(『週刊平凡』1959年7月15日号)
また恭子さんによる、こんな微笑ましい仲代さん評も、その雑誌記事の中にはあった。
〈それに忘れっぽいのは有名で、(中略)家に帰って洋服のポケットをしらべてみると、なにかなくなっているか、全然知らない人の物がポケットにはいっているかどっちかです〉(『週刊サンケイ』1959年2月8日号)
お亡くなりになったいま、なぜか想像を巡らせてしまうのは、そういった仲代さんの若き日々のことだ。