「自分のやっていることがちょっとヤバイという自覚はあります」
就職活動にうまくいかず、現在は大学病院で非正規の事務職として働く、27歳の川上やよいさんは「秘密の副業」をしている。本業ともいえる大学病院の時給は現在1400円で、月の手取りは20万円ほど。1週間の食費は3000円という切り詰めた生活に嫌気が差し、数年ほど前から副業に手を出した。
「目の前にお金がぶら下がっている」と川上さんが話す副業は、チケットの転売だ。親戚総出でチケットを確保し、中には5倍超で売れるものもあるという。
「生活が成り立たない」というほどではないものの、非常にハードな仕事ぶりで心身をすり減らす「限界労働者」たちを追った増田明利氏による書籍『限界労働者 格差社会にあえぐ22人の生活』(彩図社)から一部抜粋して、川上さんの転売生活のようすをお届けする。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の2回目/最初から読む)
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「親戚総出」で入手したチケットを転売→5倍以上で売れることも
「個人的に宝塚歌劇団のファンでして、年に2回は公演に行っていたのですが、チケットを2枚買って1枚を転売サイトに出品したら、1万2000円のものが7万円で売れたんです。えー! 何これ? って思いました」
これに味をしめた川上さんは、月に1、2度高値で転売できそうなコンサート、イベント、スポーツ大会のチケットを買い、せっせと内職に励んでいる。
「男性アイドルのコンサートチケットはものすごい値がつきますよ。正規8500円のチケットを5万円でも欲しいという人がいますから」
スポーツ関連も人気で、フィギュアスケートは1万4000円で買ったものが、なんと7万円に化けた。サッカーの国際試合やプロ野球のクライマックスシリーズのチケットも、元値の5倍が当たり前。最近だと人気が回復してきた大相撲、イケメンレスラーが揃っている新日本プロレスのドーム興行のチケットも高値で取引されている。
ただし人気チケットを仕入れるのは至難の業。特にアイドルグループのものはなかなか入手できない。
「ファンクラブに優先的な割り当てがあるので、わたしも会員になっているんです。これとは別に入手できる確率を高くするために、実家の母、妹、伯母、従姉などの名義を借りて会員になって、少しでも手に入れられる確率を高くしています」
