「自分のやっていることがちょっとヤバイという自覚はあります」「目の前にお金がぶら下がっている」

 就職活動にうまくいかず、現在は大学病院で非正規の事務職として働く、27歳の川上やよいさんは数年前から始めた「秘密の副業」について、こう話す。

 本業ともいえる大学病院の時給は現在1400円で、月の手取りは20万円ほど。1週間の食費が約3000円という切り詰めた生活や、結婚資金を貯めるために副業を始めた。

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 昨今は生活費のため、キャリアのためなどさまざまな理由から副業を始める人が増えているが、「やり始めた頃は危ないかなあと思ったけど、今はビジネス感覚です」と川上さんが話す副業とはどんな内容なのか? 「生活が成り立たない」というほどではないものの、非常にハードな仕事ぶりで心身をすり減らす「限界労働者」たちを追った増田明利氏による書籍『限界労働者 格差社会にあえぐ22人の生活』(彩図社)から一部抜粋して、お届けする。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©beauty_box/イメージマート

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就活がうまくいかず、アルバイト→非正規雇用の事務職に

「仕事は? と聞かれたら『大学病院で事務職をしています』と答えますが、正規職員ではなく1年ごとの契約です。親戚たちは堅い職場でいいじゃないと言うけど、違いますよ」

 川上さんは都内の私立大学の理学部で応用生物学を学んだのだが、就職活動は上手くいかなかった。食品、製薬、酒造、バイオベンチャーなどを志望していたがことごとく失敗、進路未定で卒業せざるを得なかったということだ。約3か月は飲食店でアルバイトをして糊口を凌ぎ、現在も勤めている私立大学の医学部付属病院に非正規事務職として採用されたという。

「ずっと窓口での新患受付や会計処理などを担当していたのですが、去年の下期から医学部の学務課という部署に異動になって、今は実験計画書の作成補助や備品購入などの手配をしています」

 この他にも教授や准教授といった幹部の出張に係わる雑務や、学会で使う資料集の編集、実験データの入力なども頼まれることがある。

「仕事の内容を話すとバリバリのキャリアウーマンみたいだけど、雑用係というのが本当のところです。派遣とか契約の事務職はこんなものでしょう」