「大学を卒業して12年ほどの間に5回も仕事が替わっている。自分でも驚いちゃいます」

 34歳の早川昇介さんは、2013年に国立大学を卒業して当時東証一部に上場していた企業に就職。順調に社会人生活のスタートを切ったものの、転職を繰り返して現在はガソリンスタンド従業員として働く。現在の手取りは25万円ほどで「ギリギリというほどではないけど贅沢はできません」と早川さんは話す。

 日々の食費を切り詰め、友人の結婚式に呼ばれれば決して少なくない祝儀の支出に苦しめられる。早川さんのような「生活が成り立たない」というほどではないものの、非常にハードな仕事ぶりで心身をすり減らす「限界労働者」ともいうべき人たちは少なくない。

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 こうした人たちを追った増田明利氏による書籍『限界労働者 格差社会にあえぐ22人の生活』(彩図社)から一部抜粋して、早川さんが2度の連続リストラに遭い、派遣で働き始めてからの生活ぶりをお届けする。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の2回目/最初から読む

生活を切り詰めるため、日課はスーパーの値引き総菜探しだという早川さん 写真はイメージ ©Zoey/イメージマート

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大卒後、5回の転職を繰り返して“ブラック企業”に

 派遣で働いたのは大手保険会社のコールセンター。自動車保険の更新通知や事故受付などを担当していたが、3か月で雇い止めに。次に携帯電話販売店に販売員として派遣されたがやはり半年で派遣打ち切りの憂き目に。

「派遣は職歴にカウントされないのでしょうが、大学を卒業して12年ほどの間に5回も仕事が替わっている。自分でも驚いちゃいますね」

早川さんのプロフィール(書籍より)

 この他に数日の短期派遣や期間限定のアルバイトなども含めると、これまでにやった仕事は十指では足りない。現在の仕事はハローワークの斡旋によるものだが、詳しい職務経歴書は不要、面接も30分程度であっさり採用された。

「会社の人には、賢いんだから危険物取扱責任者の資格を取れと言われましたけどね」

 待遇的にはどうかというと、正社員なのに賃金は日給制。8時間労働で日給1万1200円なので時間単価は1400円だ。スタンドの営業時間は8時から20時までだが、勤務時間は7時30分から20時30分までの間で交替制の8時間勤務。正社員は早川さんと所長だけで、あとは4時間勤務のアルバイトが6人という布陣。勤務体系は5勤1休のローテーションなので、月の出勤日数は25日前後になる。

「ブラック度は結構高い。時間外労働の未払いがあるんです」