『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんのベストセラー小説『消滅世界』が、初の実写映像化。人工授精による出産が常識となり、性愛を禁じられた近未来社会を舞台に、母の愛と「正常」の狭間でもがく女性・雨音(あまね)を演じた蒔田彩珠さんにインタビュー。世間の“常識”と自分の欲情に挟まれ、向き合い続ける難しい役柄をどう生きたのか。作品世界への“違和感”についても語った。
周囲の“正常”に同調することに葛藤を抱えて
──オファーを受けた時のお気持ちからお聞かせください。
蒔田彩珠(以下、蒔田) オファーをいただいた時は、まず、難しそうな作品だと感じました。自分ひとりで台本を読んでいるだけでは役を掴みきれなかったので、現場に入って、相手役の栁(俊太郎)さんやほかのキャストのみなさんと一緒にお芝居をするなかで、少しずつ雨音像をつくっていきました。
──人工授精の技術が発達し、夫婦が性行為をすることがタブーとされている世界で、母からずっと「あなたはお父さんとお母さんが愛し合って生まれた子」と言われながら育ってきた雨音を、どのような人物だととらえましたか。
蒔田 周囲の“正常”に同調しようとしながらも、母から言われ続けたことがどこか心に残り、葛藤を覚えている人物なのではないかと想像しました。ですから、強く清らかに生きたいと願う気持ちの奥に、人間的な優しさを宿す人物として描きたいと考え、役作りに挑みました。
──川村(誠)監督からは、「演じるのではなく感じてほしい」と言われていたそうですね。
蒔田 はい。具体的に「こう演じてほしい」ということは一切言われませんでした。はじめから「まずは好きなように演じてみてください」と任せてくださったので、夫の朔(さく)役の栁さんと一緒に、お互いにもっとも自然に感じられる演技を見つけていったように思います。


