「キレイになりたくて大金を払ったのに」「もう誰にも会いたくない」——。
形成外科医の村松英之さん(50)のクリニックには、美容整形の術後の傷あと相談をする患者が増え続けている。2年前に「美容術後後遺症外来」を設けてから、特に目立つのがホクロ除去手術と鼻周りの手術のトラブルだ。
「患者さんの傷あとを見ると、なんだ、このありえない傷口は? と思うことが多いんですよね」と村松さんは語る。形成外科医の視点から見ると、手術が雑な美容外科医が多いという。
村松さんが特に問題視するのが、初期研修を終えてすぐに美容医療業界に就職する“直美”(ちょくび)の医師たちだ。「解剖の知識がなさすぎる人がかなりいます」と指摘する。
「なんでここを切ってこう縫っちゃったんだ?」
形成外科では顔面外傷の治療を必ず経験し、顔の内側の構造、血流や神経、筋肉などについて徹底的にたたき込まれる。口唇口蓋裂や耳などの先天奇形、さまざまな皮膚腫瘍などを経験して、ようやく「傷の治療」をきちんとできるようになるという。
「でも直美の医師はそれをすっ飛ばしているんです。特に鼻周りの手術は難易度が高く、執刀医の技術の差が大きく出る。血管や神経、筋肉が複雑に絡み合っていて、おまけに皮膚が薄く口に近いので皮膚が引っ張られやすいんですよね」
体の構造をわかっていない医師が触ると、赤みが残ったり、盛り上がったり、引きつれた傷あとになる場合がある。
形成外科医が基本として叩き込まれる「皮膚や組織を“愛護的”に扱え」という教えがなされていないのでは、と村松さんは危惧する。愛護的とは、治療や手術をするときに皮膚や血管、神経などの組織をいたわりながら丁寧に扱うことだ。
「そういう視点で患者さんの傷あとを見ると『なんでここを切ってこう縫っちゃったんだ?』と思うことが多い」。
美容外科を選ぶ最低条件として村松さんが挙げるのが、「形成外科の経験があるか」を確認することだという。「形成外科専門医」の資格があればなお良い。
「僕は美容外科の術後の患者さんを1日あたり新規で10人くらい診ています。美容外科の先生は技術を上げてほしいと切実に思っています」と村松さんは語る。
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