「永住権」を取得しても喪失する可能性がある
長い努力と忍耐の末、無事に永住権を取得できたとしても、未来永劫、安定が約束されるというわけではない。前述のように永住ビザは国によって要件が異なり、不安定さが残るからだ。ここが日本における「永住者」という在留資格とは異なる点だ。
日本では、永住者の在留期限や活動範囲に制限がなく、海外に出るときに再入国許可を申請して、有効期限内(5年)に一時帰国することや、在留カード(有効期間7年)の更新を日本で行うこと以外に条件はない。特に問題がない限り、ずっと日本に住み続けられ、長期にわたって海外に住むことも可能だ。
しかし、海外の多くの国は、永住者に様々な要件を課している。例えば、カナダと豪州は5年のうち2年以上の居住を義務づけており、条件が満たされなければ永住権を喪失する可能性がある。また、シンガポールの場合、永住者の再入国許可は通常5年ごとに更新が必要で、その際には審査がある。
言い換えれば、「永住権」を取得しても、国によっては、永久に住み続けられるという保証はないのだ。ある移住コンサルタントによれば、政府がこうした要件を課すのは「永住する」ということに対しての移住者側のコミットメントを国として確認し、国の税金が使われる対象である永住外国人をしっかりモニターしたいという背景があるからだという。
「外国人」であり続ける限り、同じ権利を享受できない
永住権を持つ外国人が得られるメリットは、持たない外国人よりは多いものの、国民と全く同じではない。武田里子氏の研究によれば、日本人が外国籍を取得する理由として、就労機会や昇進、社会保障、税制、教育(授業料の減免、教育ローン)などにおいて「便益の大きな差異」がある。多くの国で、永住者には国政レベルでの選挙権や被選挙権が認められないなど、「外国人」であり続ける限り、国民と同じ権利を享受することはできないのだ。
欧米で起こっている政治の右傾化による反移民の動きも、永住外国人として生活する日本人にとっては不安の種だ。武田氏は外国籍の取得を検討している複数の日本人の声を拾い上げているが、その中には、欧州で右翼政権が台頭していることで、「国籍をもたないままここに居住することには、大きな不安を感じている」というスウェーデン在住の男性や、「選挙で中央政権が極右になった場合、外国人排除が考えられ」、これまで築いてきたビジネスへの影響を危惧しているというスペイン在住女性のコメントがあった。
また、英国在住の女性は、「永住日本人のように市民権を取得せずに長期在住するケースは例外的なため、イギリスの制度内でも不利で不便な立場におかれ続ける稀な存在になっているし、いつ、更に法律が変わって放り出されないとも限らない」と不安を吐露していた。
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