病気や怪我による治療をしたにもかかわらず、3カ月以上にわたって自力で動くことや、摂食、排泄が困難で、継続的に寝たきりの状態にある障害「遷延性意識障害」。この障害を持つ人の中には、意識がない状態の人もいるが、中には意思を示せる人もいる。かすかな意思表示で家族とつながる男性を取材した。

 家族とつながる「かすかな意思表示」

 

宮崎市に住む大徳敬祐さん(37歳)は、重度の遷延性意識障害により寝たきりで、両親の幸博さんと容子さんが日々のケアを担っている。

 

1988年生まれの敬祐さんは、スポーツ万能で野球が大好きだった。

 

高校3年生の時にバイクで転倒し、交差点で前から来た軽乗用車にはねられた。一命はとりとめたものの、頭部損傷で、医師から遷延性意識障害という重い脳の障害が残ることを告げられた。

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敬祐さんの母 大徳容子さん:
命さえあれば何とでもなると。悲観的な感じではなかった。

 

敬祐さんの父 大徳幸博さん:
治ると思っていた。

宮崎県内の支援状況と課題

遷延性意識障害家族の会 九州「つくし」の代表を務める谷口正春さんに話を聞いた。

 

谷口さんによると、宮崎県内でこの障害を持つ人は200〜300人だという。あくまでも推定値。全国でも5万〜7万人という推定値でしかデータがないという。

母親の容子さんは、胃ろうで栄養をとり、こまめに体勢を整えることが必要な敬祐さんの生活を中心の生活を送ることを決意。18年間の療養・介護生活は訪問介護に支えられている。

2時間ごとに訪れるヘルパーがストレッチやバランスボールを使った運動で筋肉や脳に刺激を与える。しかし、制度上の制約から、必要な時にヘルパーが訪問できないといった課題も抱えている。

 

敬祐さんの母 大徳容子さん:
2時間空けないと(ヘルパーが)入れないというのがある。来てほしい時に来てもらえない。制度的に無理というのがある。

谷口代表は、「田舎に行くほどヘルパーを抱えている事業所が少なく、家族がその負担を負わざるを得ない。そのため、家族は家を離れることができない」と、在宅介護における家族の孤立と負担の大きさを指摘する。

 意識の有無と意思疎通の試み

これまでこの障害には、医学上「意識がない」とされてきたが、約10年前から、一部の人に意識があることが分かってきている。