「傷だらけの顔で介護に奮闘」――女優・小島可奈子(50)は、犬に顔を噛まれた傷を隠しながら、父の介護に奔走していた。入退院を繰り返す父に寄り添い、日常の着替えから通院まで支え続ける彼女の日々は、まさに戦いの連続だった。

今年、最愛のお父様との別れを経験された女優の小島可奈子さん ©深野未季/文藝春秋

「海が見たい」父の願いを叶えた最後の外出

「医師から『外食は控えるように』と言われていたのに、父は『サザエが食べたい』『お寿司が食べたい』と言って聞き入れなかった」と小島は当時を振り返る。心配しながらも父の願いを叶えるため、車椅子に乗せて家族で海に出かけた。「海の中道」から志賀島までドライブし、サザエを車の中で食べた後、病院に確認の上でお寿司も食べさせた。それが、父との最後の思い出になった。

「その2週間後に父は亡くなりました。色々としんどい思いもしたけれど、あの時出かけて、お寿司を食べさせてあげてよかったなと思います」

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 父は2023年8月15日、小島の母の月命日でもあるお盆の時期に息を引き取った。亡くなる前日、自力では起き上がれないはずの父がベッドに腰掛けていたことに驚いた小島は、「こんなに元気なら、もっと長期で入院できる病院を探さないと」と考えていた矢先、その夜に危篤の連絡を受けた。

「最後まで父らしかった」

「しばらく父の手を握っていたのですが、疲れて隣のベットで休憩してる時に亡くなっていました。滅多にないことだそうですが、ペースメーカーの影響で心電図が平坦にならず、看護師さん達もいつ心肺が停止したか分からなかったそうです」

小島さんに看取られたお父様(写真:本人提供)

 それでも小島は「最後まで人騒がせというか、何だか父らしい」と笑顔で語る。穏やかな父の表情を見て、自分の役目を全うしたという思いで見送ることができたという。

 介護の経験から学んだ教訓として、小島は「特に女性は『自分が頑張ればいい』と抱え込みがち。家族だから何でもしてあげたくなるけれど、人の軸に合わせて生きていると疲れ果ててしまう」と指摘する。そして「介護も育児も周りの人に頼ることが大切。遠慮をして潰れてしまう前に、助けを求めてほしい」と、同じ境遇にある人々へメッセージを送った。