独立、弟の俳優デビューなどを経て…

 2018年にはそれまで所属してきた事務所から独立し、フリーとなる。以来、スタッフとの打ち合わせに参加することも増えた。演じる役と現実の自分とのあいだにギャップを感じていたのも、《フリーランスになって少し落ち着いた今はもっと素直に、嘘とホント、虚と実のあわいを好きになってきています。やっと、そのあわいを楽しめる技術を身につけたのかもしれません》と語る(『tempo』前掲号)。

 2010年には、4歳下の弟の満島真之介が姉の活躍に触発されて俳優デビューした。舞台『ハムレット』(2015年)をはじめ、姉弟でたびたび共演もしている。満島によれば、自分が表現することや作品がよくなることに集中してしまうタイプなのに対し、真之介は「現場が明るくあることが大事。元気にあいさつが第一条件」みたいな人なので、そこから教わったことはいっぱいあるようだ。

弟の満島真之介 ©文藝春秋

“先生”として若手の芝居をみることも

 弟のおかげで自分より年下の人たちの芝居を見る機会も増えたという。4年前の対談では《最近は若い女の子二人にお芝居のワークショップの先生をやっています。自分がかかわる作品で頼まれたことですが、お芝居にちょっと不安があるのを、「芝居って、こうやったらメチャクチャ楽しくなるよ」とか「恥ずかしがらないで、大きい芝居になってもいいから遊んでみよう」みたいなことをやってるんです》と語っていた(『週刊朝日』2021年4月2日号)。

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 Netflixの配信ドラマ『First Love 初恋』(2022年)をもって、20歳から積み重ねてきた“お芝居の体幹”に一区切りつけると宣言したのも、後輩たちを思ってのことだった。その少し前から、現場へ行くと、満島の出演作品を観て俳優やスタッフを目指したと話してくれる若い人たちにたくさん出会うようになっていたという。

満島ひかり(2019年撮影) ©文藝春秋

『First Love 初恋』の寒竹ゆり監督からも、前出のドラマ『カルテット』のある回の世界観や、そこでの満島の佇まいをヒントに同作をつくったと聞かされた。満島はこれを受けて《自分がもしも何かしら人に影響を与えてきたのだとしたら、その影響を受けた人たちが今度は次の誰かにバトンを繋いでいくだろうなって。そう思ったら、私自身はそろそろここで違った視点になってもいいかなって》考えたのだという(『with』2024年9月号)。