さいたま市の住宅街に、通常の葬儀場の2倍以上となる総工費1億3000万円をかけて誕生した「ヘビメタのライブができる葬儀場」こと、多目的ホール「LIVE THEATER +810 PLUS HEART」がある。テレビ番組の制作に携わっているメンバーや、シルク・ドゥ・ソレイユ関係者が手掛け、3面LEDスクリーン、ジェットエンジンレベルの音量に耐える防音設備、テレビ局並みの配信システムなど、錚々たる設備を備えているド派手な施設だ。

 同ホールを手掛けた、元バンドマンで葬儀会社・愛翔葬祭の社長を務める関根信行さん(54)に、異色すぎるホールが誕生した理由や、こだわりの設備について話を聞いた。

愛翔葬祭の関根さんは、もともとバンドマンを目指していた。一度は夢を諦めたが、40歳ごろから再びバンド活動を再開。それが今回のユニークな葬儀場につながっている(写真提供=愛翔葬祭、以下同)

きっかけは友人の言葉だった

 関根さんがこの施設を構想したきっかけは、友人の言葉だった。Bon Joviの『It's My Life』をかけながら拍手で送り出してほしいと力説されたとともに、「でも日本にはそんな葬儀ができる施設がないし、理解してもらえない」とも言っていたという。

ADVERTISEMENT

 そこで「拍手でワイワイと故人を送り出すような葬儀屋が1社くらいあってもいいじゃないか」と考えた関根さん。ここから、異色すぎる葬儀場が誕生していく。

 設計にはフジテレビグループの美術制作会社、照明にはコロナ禍で公演ができずにいたシルク・ドゥ・ソレイユ日本公演チームが参画。「よくこれだけのスキルや実績をもつモノ好きが集まったと思いますよ。今もう1回やれと言われても、たぶん無理ですね」と関根さんは振り返る。

「ホールがあるさいたま市の岩槻は、言ってしまえば“田舎”ですし、住宅街なのもあって、5000万円かけて一般的な葬儀場を作るだけだと反対が起きそうだなと。どうせお金を使うなら、自分も含めてワクワクするものの方がいいと考えたんです」

ふだんは葬儀場のLIVE THEATER +810 PLUS HEART。閑散期には「ライブ会場」へと大変身する

LEDスクリーンに壮大な防音設備……葬儀場らしからぬ豪華設備が満載

 結果、一般的な葬儀場の建設費用が5000万円前後と言われているのに対して倍以上の金額をかけ、LIVE THEATER +810 PLUS HEARTが生まれた。2022年10月からテスト運用としてライブや配信を始め、2025年6月から本格稼働を開始。直近では、アーティストが“生前葬”を行うなど、ユニークな施設として知名度が広がりつつある。

 葬儀にヘビメタのライブ、漫才にコントなど、さまざまなコンテンツに対応しているLIVE THEATER +810 PLUS HEARTだが、唯一NGなのは「怪談」だ。

「葬儀場ですし、怖い画も撮れると思うので、おもしろいでしょうけど……さすがに世間の目もありますから。ホールの外観も葬儀場に見えないようにこだわって作ったので、わざわざ怖い系に寄せる必要はないだろうと社員からも言われています」


 世にも珍しい「ヘビメタのライブができる葬儀場」の豪華設備の詳細や、昨今トラブルになることも多い「悪徳葬儀」の現状について関根さんに聞いたインタビュー全文は、下記のリンクからお読みいただけます。

次のページ 写真ページはこちら