初公開! 大山誠一郎のネタ帳
――そうすると、ネタ帳というのがあるのでしょうか!?
大山 そうですね。本1冊ごとに1冊ずつネタ帳を作っていまして、ちょっとお見せします……(と、鞄からCampusのA4ノートを取り出し)、こんなふうに、『死の絆』のためのノートを作りました。
――ノートに書くとご自身の中で思考が整理されますか?
大山 そうですね。思考が整理され、刺激されて、このように演出したらいいとか、このような手がかりを入れたらいいとか、アイデアを発展させることができます。また、アイデアを練る中で浮かんだ問題点や課題を列挙しておき、解決できたら解決済みのレ点を入れています。
昔はもっと詳しく沢山書いていたんですけれども、最近は時間がないのでわりとシンプルに書くようになりました。
――小説の細部も気になってしまうのですが、たとえば、赤い博物館はいつも予算不足で、すかすかソファやオンボロ車が出てくる設定です。思わずクスッと笑ってしまうユーモアが漂うところも本書の魅力の一つですが、最初に設定されるのですか?
大山 いえ、書いているうちに思いつきます。
――そうすると、執筆されるうちに、登場人物が勝手に動いたりしますか?
大山 いや、残念ながらそれはないですね(笑)。自分が冴子になりきって書く、というよりも、端から見て冴子に台詞を言わせるという感じです。また、登場人物は周囲の人を参考にしているわけではなく、たぶん、自分の性格のさまざまな部分が反映されているのではないかと思います。
――コミュ障でニコリともしない冴子ふくめて個性的な登場人物は全員、大山さんの分身!?
大山 はい(笑)。自分の性格の一部分を極端化して人物造形しているように思います。私はもともとコミュニケーション能力の低い人間なのですが、大学で推理小説研究会に入り、その後二十年以上、作家と勤め人の二足の草鞋を履く生活をして、だいぶましになりました(笑)。そうした経験がなかったらなっていたであろう自分を極端化したら、緋色冴子という人物になるかもしれません。
(第3回に続く)
