生成AIにかかるコスト問題

けんすう なるほど。あともうひとつ本で面白かったのが、「歴史的にマネーがイノベーションを加速させてきた」という視点でした。例えば石器時代なんて、尖った道具を使うと肉が切りやすい、みたいなイノベーションが生まれるのに約5万年もかかっている。でも大量のマネーが技術開発に投じられてきた20世紀には、10年に一度くらいのペースで画期的なイノベーションが次々と生まれてきたわけです。

 そして今や、ある量子コンピューターの専門家が言うには、AGIが実用化されたら5分に1回のペースでノーベル賞並みの発明が出てきてもおかしくない、と。人間の認知のスピードが追いつかないくらいの進化のペースで、朝起きたら世界が変わっていた、ということもリアルに起き得るわけです。

 AIは産業革命くらいのインパクトを歴史にもたらすと僕は思ってるんですが、そのあたりどうでしょうか。

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エミン 将来的にAIがどれほどの変化を社会に与えるかはわかりませんが、僕はAIも含めてすべて「コストベース」で物事を捉えています。要は、生成AIが作業する社会的なコストをマネタリーベースで考えているというか。

 

 ご存じのように、AIは半導体チップを使ってデータセンターで処理しているので、とにかく電力食いで、莫大なエネルギーコストがかかります。僕がいつも思っているのは、将来的に、自分がやる仕事のコストをAIが代替したときのコストと比較して、自分のほうが安くできれば生き残れる。つまりAIにやらせると、めちゃめちゃコストがかかるしうまくできないタイプの仕事は世の中に残るんです。AIを動かすのもタダではないので。

 最近よくTikTokやXで、くだらないAI動画が流れてくるでしょう。あの短い動画を作るのに、例えばOpenAIの動画生成AI「Sora」で、1本あたり推定約5ドルかかると言われています。これはOpenAIのコストです。動画も最初は目新しいけど、ああいう動画、2、3回目にはもういいでしょ? 

けんすう 飽きますよね(笑)。

エミン あれで1本5ドルは正直かなりのコスト。いまAIのベネフィットをちょっと過大評価しすぎな気もするんですよね。AIバブルの相場の過熱感は否めませんね。

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