自衛隊の装備は“まさかの木銃”
今回、警察に課された任務は複数のハンターを配備し、数人の勢子(追い立て役)で巻き狩り(待ち伏せ)する「先手必勝」パターンでなく、街に侵入してきたところを仕留める「専守防衛」スタイルである。となれば、さらに自衛隊も含めた法整備を進めていけば、警察の能力を結集させ、自衛隊の装備をフルに活用した、大規模で効果的な作戦も組めるようになるであろう。
万が一、街中で仕留めそこない、山間部に逃げられて見失えば、そのときこそ自衛隊の対人狙撃班の出番。彼らは山間部での潜伏しながらの隠密行動やサバイバル能力に長け、猟友会から狩猟の知識を受け継げば、クマ狩りにも向いているのではないか。ドローンやヘリ、雪上車などまで展開させたら、かなり効率的な駆除活動が期待できるはずである。
しかし今回、自衛隊のクマ駆除活動に与えられたのは、狙撃銃ならぬ木銃である。こと「戦争」状態に至っては軍官民の共同作戦でなければならないのに、それを自衛隊の活動だけ制限するなど片手落ちである。
今から「ガバメントハンター」を育成するなどという時間がかかることより、予算、人員、作戦立案などの権限を現地部隊に与え、フリーハンドで活動させるべきではないか。災害派遣にPKO(国連平和維持活動)と自衛隊や警察、海保、ほか官公庁は災害のたびに人命救助や復旧復興に成果をあげてきたのである。
自衛隊の第一の任は国防である。「町の便利屋」ではない。そのうえ慢性的に定員割れを起こしており、1人の自衛隊員にかかる負担は増える一方である。それでも、このような国民の生命と安全な暮らしを守るべき事態にもしっかり対峙できるように、直ちに人員補充、そのための待遇改善等の措置を国は急ぐべきではないか。
いざ秋田の地へ
ここに至っては何としてでも現場を見ざるを得ない。不肖・宮嶋、現役ハンターと猟友会員の1人として、いや報道写真家としても「口舌の徒」だけにはなりたくない。
現場の地域住民やクマと対峙する自衛隊員らとともに、その恐怖と苦難を共にせず、なにがハンターか。どこが報道写真家か。
かくして、やってきました。所は佐竹敬久前知事が「まさに戦争」と表現したばかりか、今年に入ってから死者4人を含む66人もの被害者(11月30日時点)を出し、狩猟を生業にする職業マタギの本家、阿仁マタギの故郷の阿仁を擁する秋田県である。
撮影=宮嶋茂樹
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