クマ被害が相次ぐ日本社会。自衛隊の後方支援が終了した今なお、現場では水際対策が続けられ、その緊張は収まらない。現役の猟友会員でもある報道カメラマンの不肖・宮嶋が、クマ急増で浮き彫りになる“課題”を指弾する。(全4回中の4回目/最初から読む)
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到着早々にクマ出没の一報が…
40年以上のカメラマン人生で初めて降り立つ大館能代空港(秋田県北秋田市)では、肌を刺す寒風が吹きすさんでいた。
空港のレンタカー屋に1台だけ残っていた軽自動車のカーラジオから早速流れてきたのは、隣町の能代市内のスーパーにクマが「立て籠もり」続けているという一報であった。
「これはまた早速どえらいことやないか。早速クマの先制パンチかいな」と思いつつ、もちろん立て籠もりクマの駆除は自治体などに任せるしかないのだが、慌てずハンドルを能代市内に向ける不肖・宮嶋であった。
本音は愛銃「ベレッタ」と30-06スプリングフィールド弾持参でクマと対峙したかったところだが、仕事(カメラ)と趣味(ライフル)の二足の草鞋などという半端な気分で人食いクマという凶暴な猛獣に立ち向かうと、それこそ怪我のもと、いや命取りにもなりかねない。そんなことになったら秋田の民にも大迷惑をかけかねんと、誤射防止のため、猟友会より支給された蛍光色のベストとキャップに身を固めてきたのである。
どうやってこんな街中までクマは出てきたのか
さらにクマよけスプレー(1万4000円)も準備しようと、常連でもある都内の専門チェーン店にも出かけたが、なんと全店で売り切れ、再入荷も未定という。
しかし、なんとか痴漢退治の警報器を懐に収めて、クマの立て籠もるス-パー、イオン能代店にライフルならぬカメラを担いで向かうのであった。
それにしても、人口5万弱の都市の市役所の隣だというのに、なんやこの人気の無さは。日曜午後だというのに、飲食店のほとんどもシャッターを下ろしたまま。クマは地元産業まで脅かしているのではないか。
目につくのは「秋田魁新報」などカメラ担いだ地元メディアや制服警察官くらいである。いったい、どうやってこんな街中までクマは出てきたのか。


