クマ被害が相次ぐ日本社会。自衛隊の後方支援が終了した今なお、現場では水際対策が続けられ、その緊張は収まらない。現役の猟友会員でもある報道カメラマンの不肖・宮嶋が、クマ急増で浮き彫りになる“課題”を指弾する。(全4回中の2回目/続きを読む)
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ハンターの数は少なくなるばかり
日本では、銃を所持できるのは警察、自衛隊、海保、マトリ(厚生労働省麻薬取締官)や刑務官、入国警備官等を含めて約52万人ほどである。そのほとんどが所持するのは、殺傷力が最小の「拳銃」であり、うち約22万人いる自衛隊員の場合は「小銃」である。
つまり、1億人以上いる日本人のほとんどは、いや警察官ですら職務執行上で銃を発砲した経験がほとんどない。犯人射殺は数年に一度あるかないか。戦後では「瀬戸内シージャック事件」や「三菱銀行人質事件」などに限られ、警察官に射殺された犯人はごく少数である。自衛隊員にいたっては、戦後80年で一度も敵対行為に対する銃による発砲がないのである。
民間人では銃所持許可、狩猟免許等のハンターになるための諸手続きの合格率は各都道府県や年度により大差があり、また公表されていないところもあるが、年々低くなりつつあるとみられている。
猟友会の全国組織「大日本猟友会」によれば、1970年代のピーク時には、猟友会に入会しない者も含め銃所持者は約50万人、所持許可銃は100万丁が日本に存在した。だが、半世紀を経た2024年度には第1種銃猟免許を持つ会員数は約5万6000人まで減少し、それ以外の会員も含む全会員約10万人のうちの実に6割が60歳以上という危機的状態にあるのである。
さらに戦後1968年の金嬉老事件、1972年のあさま山荘事件、1979年の三菱銀行人質事件、2007年のルネサンス佐世保銃乱射事件、そして一昨年に長野県中野市で起きた警察官2名を含む猟銃を使用した4人殺害事件など、猟銃が事件に使用されるたびに、銃所持許可の条件や所持できる猟銃の種類や機能は制限され続けている。
ようやく重い腰を上げた日本政府
若いハンター希望者が「そんなに面倒くさくて、時間もかかるんやったら、もうええわ」と諦めていくのが目に見えるようである。
しかし、ここまで読み進められながら「狩猟」にご興味がわいてきた若い衆! あきらめるのはまだ早い。今もほとんどの猟友会は若い力を求めている。そして、日本政府も「ガバメントハンター」と称して、ようやく自治体職員や警察・自衛隊のOB・OGらに狩猟免許の取得を奨励するようになった。
群馬県の山本一太知事も狩猟免許を取得すると公言しているし、実は故・石原慎太郎元東京都知事も猟銃を所持していた。さらに上皇陛下も散弾銃射撃を嗜まれていたのである。かように銃はそれを扱う人物により、評価が分れてしまうのである。

