もうこれだけでもうんざりするくらい手間と時間がかかるのである。そして、これらの許可・免許が交付され、やっと出猟できるかというと、まだまだある。出猟する都道府県での狩猟者登録や、国有林に立ち入るための入林届も必要なのである。
つまり、狩猟免許さえあれば全国どこでもいつでも狩猟できるわけでなく、各都道府県ごとに登録が必要であり、一県ごとに高額な手数料と時間もかかるのである。
さらに、猟期以外での有害鳥獣駆除には地元自治体から依頼される必要があり、実質、他県の猟友会員は、地元自治体以外での駆除や緊急銃猟には参加できないのが実状なのである。
クマへの攻撃はあくまで「専守防衛」
しかし、犠牲者が13人、負傷者が200人にも及ぶようになり、日本政府もやっとクマ対策に本腰をいれて……とまではいかないが、対策に乗り出している。法整備の末、警察の機動隊の銃器対策部隊に、ライフル銃による緊急逮捕ならぬ、緊急駆除が認められるようになったのである。
だが、それでもどうにも「泥縄感」は否めず、現状の法体系と部隊の規模でどれほどの成果が期待できるのか、まだまだ未知数である。
それに、クマ被害対策に参加している自衛隊員が丸腰というのはいかがなものか。確かに自衛隊の第一の任務は国防である。クマ退治は本来の仕事ではないし、動物に対して武器使用できる法的根拠がないのは先述した通りである。
今回の出動も「輸送」任務の一環という法的根拠で、箱罠の輸送など後方支援に活動を限定し、クマへの攻撃はあくまで「専守防衛」、つまりクマからの襲撃がない限り反撃できないとされている。
とはいえ、兵士よりも凶暴な敵を相手にして、盾とクマ避けスプレーと木銃だけで戦えというのは、あまりにも酷な話のように思える。コロッセオで猛獣と戦った古代ローマ帝国のグラディエーターと同じではないか。
撮影=宮嶋茂樹
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