ホローポイント弾が“暗殺未遂事件”に使われた事例も
話を戻して、狩猟においても同様に、どんな弾種でも自由に使うことができるわけではない。
実際、北海道ではオオワシやエゾフクロウなどの猛禽類が、ハンターが仕留めたエゾシカの死肉を漁った際に残留していた鉛弾頭の破片を摂取して鉛中毒を起こし、死んだとする例が報告されたため、狩猟には散弾銃のスラグ(1発)弾やライフル弾には銅製弾頭の使用が義務づけられている。
当然、銅は鉛より比重が小さく、風の影響を受けやすくなり、弾道もブレやすくなる。また鉛より硬いため変形しづらく、弾頭形状も複雑に、そして高価になった。
そのため、狩猟ライフル弾は現在、ホローポイント弾という先端が平たく穴が開いた銅製の弾頭を使用している。
空力性能上、穴が開いた先端部には緑や青色の先端が尖った樹脂がはめられているが、目標に命中するや先端の樹脂部は取れ、映画『エイリアン』の卵が開く場面のように弾頭がマッシュルーム状に広がることで貫通しにくくなり、目標に大きなダメージを与えるという結果を生む。これが軍用のFMJ弾頭だと、目標にもよるが、動物の骨に当たってもわずかに変形する程度で貫通してしまう。
実際、日本ではホローポイント弾が狩猟ではなく犯罪で使用された例もある。1995年に発生し、迷宮入りのまま時効を迎えてしまった国松孝次警察庁長官狙撃事件で使用された凶器、コルト・パイソンから発射され命中した3発の銃弾は、357マグナムのホローポイント弾だと言われているのである。
国松長官は重傷を負いながら奇跡的に回復し、長官に復帰。のちにスイス大使などを務めたが、事件は2010年に時効を迎えた。
さて、警察のライフル銃部隊や自衛隊に編成されている対人狙撃班は、一般の制服警察官などと違い、普段から銃器の取り扱いに慣れた人たちである。
7.62mm弾は弾頭重量や火薬量が変われば弾道が変わるが、射撃場で1日もあればスコープのゼロイン(照準合わせ)は可能なはずである。射撃能力に至っては民間ハンターよりはるかに優秀かつタフだろう。

