「猟用」と「軍用」の決定的な違いとは?
警察は国産の豊和M1500ライフルなどで、自衛隊はアメリカ・レミントン社製のM24対人狙撃銃に国産の64式小銃。ともに使用弾は7.62mmNATO弾、口径は30口径(30/100inch=2.54cm×0.3)である。
実は、連発(機関銃)機能がある64式小銃は別として、豊和M1500とM24のオリジナルとされるレミントンM700は猟銃としても流通しており、外見も性能もほぼ変わらない。さらに軍用の7.62mm弾は民間の308Winchester弾とまったく同じ弾、つまり併用できるのである。
ただし、口径が同じでも弾頭が猟用と軍用では違い、当然、弾頭重量や火薬量、弾道も異なる。
実は、軍用で使用される対人用弾頭は、鉛の弾頭が銅合金で完全に覆われて先端が尖ったFMJ(フルメタルジャケット)弾だけだと、国際条約(ハーグ陸戦条約)で決められている。それ以外は傷口がひどく損傷し、残酷だから使用禁止なのである。
理由はそれだけでない。それどころか現在は、7.62mm弾より口径がより小さく、貫通力もあり、当然殺傷力も低い5.56mm弾が小銃弾の主流になっている。
殺傷力の低い弾が“あえて採用される”ワケ
自衛隊も64式小銃が7.62mm弾だったのに対し、1989年に制式化された89式小銃から5.56mm弾を使用するようになり、米軍のM4ライフルや仏軍の小銃H&K(Hechler und Koch)416等、西側の制式小銃もすべて5.56mmFMJ弾である。その理由は口径が小さく、弾が小さく軽くなり、より多くの弾数を歩兵が携行できるから……というのもあるが、もっと現実的な理由がある。
前線で撃たれて死亡した遺体はそのまま放置される。一方、より小さい弾頭で殺さず負傷させると、まともな軍隊であればその負傷兵を後方へ移送する。
そのために、さらに2人の兵力を割かなければならないので、戦力が削がれる。さらに、負傷兵の悲鳴は敵兵の士気を低下させられる……そんな残酷な理由から殺傷力が低く、貫通力の高いFMJ弾の5.56mm口径が主流になったのである。
こんな思考回路に陥る人間は、ある意味クマより残酷である。