「SHEINに行くけど、買い物はしない」根深い理由とは?
店舗が賑わっているにもかかわらず、実際に商品を購入する人が少ない背景は「価格」だけではない。具体的には、SHEINの「超高速生産モデル」に対する強い反発がある。
フランスではZARAでさえ「2週間ごとに商品が入れ替わる」高速サイクルで批判されてきたが、SHEINはそのさらに上を行き、数日~1週間単位で新作を投入するといわれている。この異常なスピードが、フランス社会ではいくつもの問題を孕んだ仕組みとして受け止められている。
1つは労働環境だ。商品サイクルが極端に速いということは、デザイナーや工場労働者が短納期・低賃金・長時間労働を強いられる構造につながる。バカンスの権利をふくめ労働環境に敏感なフランスでは、こうした働かせ方そのものが強烈な拒否感を招く。
大量廃棄の問題も反感を生む。フランスの街中には古着を回収するためのボックスが多く置かれており、回収された服の多くは経済的に貧しい国・地域へ送られる。
しかし近年はあまりに大量の服が回収されているため、送られてくる現地では「もう服はいらない」と拒否する動きが広がっている。結果、フランスで捨てられた服が他国へ運ばれ、さらに現地で消化しきれず、最終的に燃やされるという無駄な行為につながって問題視されている。
さらに、二酸化炭素排出の問題もある。中国で作られた服がフランスに届くまでには多くの燃料が必要だ。商品入れ替えが激しいほど輸送量が増え、環境負荷も高まる。こうした背景から、SHEINを筆頭に「ウルトラファストファッション」と呼ばれるブランドは政府・環境団体・産業界から激しい批判の対象になっている。
それでもSHEINは攻勢を緩めていない。パリを皮切りに、ディジョン、グルノーブル、ランス、リモージュ、アンジェなど、地方都市でも物理店舗や売り場スペースを展開する契約を進めていると報じられている。
批判もどこ吹く風で店舗網を拡大するSHEINを、人々はどう見ているのか。BHV館内で高齢の女性に話を聞くと、強い不満を隠さなかった。

