2025年11月、中国発のファストファッション大手SHEIN(シーイン)が、パリ中心部の老舗百貨店・BHV(ベー・アッシュ・ヴェ)に常設店をオープンした。

 同社として、その場で服を買えるタイプの常設店は「世界初」。しかしながら、オープンした11月5日、SHEINがオンラインで幼児に似せたラブ・ドールや、購入や所有に特別な許可を要する「武器」を販売していたとして、フランス当局が国内でオンライン販売を一時停止させるとの報道が出るなど、混乱が起こった。

 炎上の真っただ中のブランドが、よりによってパリの心臓部に店を出す——これが市民の怒りを刺激し、開店前には「SHAME ON SHEIN!」などのプラカードやメガホンを手に叫び続ける抗議者であふれかえり、機動隊も出動する大騒ぎになった。

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 実際に店舗が入居する百貨店へ足を運ぶとともに、現地の人たちに話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)

「世界初」の常設店をオープンしたが、炎上したSHEIN ©綾部まと、以下同

「労働者を搾取している」「児童ポルノを販売していた」

 2025年11月5日、パリ4区の中心にある老舗百貨店BHV周辺は、早朝から異様な雰囲気に包まれていた。

 SHEINの世界初となる常設店オープンに合わせ、数百人規模の抗議者が集結。市庁舎前の広場やリヴォリ通りは多くの人で埋まり、一部では一時的に交通規制が敷かれていた。

普段のBHV周辺のようす

 抗議者たちは「SHEIN IS COMPLICIT IN CHILD SEX ABUSE(児童性搾取に加担している)」「STOP ULTRA FAST FASHION」といったプラカードを掲げ、メガホンを使って「SHEINは地球を汚染し、労働者を搾取している!」 「児童ポルノを販売していた企業をパリの中心に入れるのか!」などとBHVの正面入口に向かってコールを上げる者の姿も見られた。