2025年11月、中国発のファストファッション大手SHEIN(シーイン)が、パリ中心部の老舗百貨店・BHV(ベー・アッシュ・ヴェ)に「世界初」の常設店をオープンした。
一方、SHEINがオンラインで幼児に似せたラブ・ドールや、購入や所有に特別な許可を要する「武器」を販売していたとして、フランス当局が国内でオンライン販売を一時停止させるとの報道が出るなど、オープン前後には大混乱が起こった。
そもそも「ファッションの国」とされるフランスで、「ウルトラファストファッション」と呼ばれる、安さを売りにしたブランドは受け入れられるのか。実際の店舗を訪れるとともに、現地の人たちに話を聞いた。(全2回の2回目/前回を読む)
たくさんの人が店を訪れる一方で……
撤退したブランドのスペースがぽっかりと空いたせいか、館全体がどこか閑散とした空気をまとっていたBHV。その中で、騒動の発端となったSHEINの店舗だけは、まるで別世界のような熱気に包まれていた。
店先にはロープが張られ、入口には屈強なガードマンが立ち、常に入場規制がかかっている。出口専用の警備員も配置され、「入口」「出口」「店内」の3段階で目を光らせる徹底した警戒態勢が敷かれていた。
店内に入ると、まず人の多さに圧倒される。見たところ観光客の姿はほとんどなく、聞こえてくるのはフランス語ばかりだ。来店者の中心は10~20代の若者で、スマートフォン片手に動画を撮る人も多い。友人と「ここがあのSHEIN?」と笑い合いながら歩き回る姿が目立つ。一方で、高齢の女性客がゆっくりとラックを眺め、生地を指先で確かめながら進んでいく姿もあり、来店者の年齢層が非常に幅広いことがわかる。


