自分の顔を見て「言葉で表現するのは難しいほどのショック」
SHIBUKI 手術が終わって座るトレーニングができるようになった頃、ずっと顔が引っ張られているような違和感があったので、母に「鏡を見せて」と頼んだんです。母は私がショックを受けるといけないと思って、周囲から携帯や鏡を一切排除していたんですね。
実際に自分の顔を見た時の衝撃というか絶望というか……言葉で表現するのは難しいほどショックを受けました。
――パニック状態というか。
SHIBUKI もう頭真っ白で、母と一緒に泣きじゃくって。将来、当たり前にできると思っていた恋愛も結婚も仕事も、何もかも自分には無理。「人生終わった」と思いました。
――小さい頃からモデルを目指していたそうですね。
SHIBUKI モデルになるのが夢だったし、実際スカウトをされたこともあって。自信過剰かもしれないけど、それまで自分の顔に悩みを持ったことがなかったんです。
そんな中で顔面麻痺になってしまって、おしゃれもメイクも、大好きだったそういうものが全部遠くにいってしまった感覚でした。
半年後に全部の後遺症がレベルアップしてしまった状態に
――その後はどんな治療をされたのでしょう。
SHIBUKI 術後、リハビリ専門の病院に移ったんですけど、半年後に脳幹部から再出血してしまって、また元の大学病院に戻って集中治療室に入ったんです。
前にはなかった首にも麻痺が出たり、トイレが自分でできなくなったり、呼吸も難しくなるほど症状が悪化して。水頭症にもなりかけ、ついに呼吸が止まってしまって緊急手術になりました。
奇跡的に一命はとりとめましたが、全部の後遺症がレベルアップしてしまった状態でしたね。
――具体的には、どんな症状が出ていた?
SHIBUKI 体幹障害というんですけど、ずっと不安定で揺れているような感じで、何かにつかまっていないと立つことも難しくなりました。
口も開きづらくなって、水を飲んでも吐いてしまったり、しゃべるのもあくびするのも笑うのも大変な状況でした。
――右半身と左顔面の麻痺が残ったということですが、右半身麻痺というのは、頭のてっぺんからつま先まで、右側だけが麻痺しているということですか。
SHIBUKI そうです。右側だけ全部、感覚が鈍いんですよね。痛みを感じにくいし、温度もわかりにくいので、お風呂とか料理の時はやけどをしないように気をつけて、左足からお風呂に入ったり、左手を軸にして料理をしています。
逆に、顔は左側が動かなくてまばたきもできないので、目が乾燥しないようにラップを常にしているんです。
――もともとは右利きだったんですか?
SHIBUKI そうだったんですけど、右側に麻痺が出たことで右手がうまく動かせなくなってしまったので、練習して左利きに変えていった感じで。
今は左手で文字も書けるようになりましたけど、やっぱり時間がかかるし、きれいに文字を書くのは難しいですね。

