デンマーク文化研究家の針貝有佳さんによると、日本人とデンマーク人の旅行の仕方には大きな違いがあるという。針貝さんは「日本人は行きたい場所をどれだけ多く巡れるかということに重点を置いているのに対し、デンマーク人はそれよりも大切にしている価値観がある」という――。(第2回/全3回)
※本稿は、針貝有佳『デンマーク人の休む哲学』(大和書房)の一部を再編集したものです。
日本人の旅行は「仕事」に見える
デンマーク人の夫が面白いことを言っていました。
日本人の旅行は「仕事」をしているように見えることがある、というのです。
ガイドブックやネットで訪問先の研究をして、行きたい訪問先をリストアップして各地を回り、写真撮影をしたりチェックマークをつけたり。そのスタイルが悪いということではなく、タスクをこなすように観光していて、まるでバケーション中でも仕事をしているように見えるようです。
最初にデンマーク一人旅をした当時の私はまさにその典型でした。
ガイドブックに紹介されている場所をどれだけ多く回れたか、ということを「旅の充実感」だと思い込んでいました。けれど、デンマークで暮らすようになってから、なるほど、一日の訪問先プランは1カ所あるかないかぐらいがちょうど良いのだな、と思うようになりました。
行き先にとらわれてしまうと、行くことが目的になってしまい、その場の空気や風景を全身で満喫できません。それよりは、どこでも良いからみんなでゆっくり楽しめそうな場所に出かけて、特に目的もなく、気が向くままに歩き回ったほうが楽しいのです。
そう感じるようになってきたということは、私も長年のデンマーク暮らしで、デンマーク人体質になってきたということかもしれません。
人気スポットはよっぽどの情熱がない限り行かない
日本で休暇というと、人混みを思い浮かべる方も多いかもしれません。人気の観光スポットや、話題の場所に足を運ぶ人も多いでしょう。
