三上智恵監督

「沖縄戦の悲劇のひとつに、標準語を話さない人はスパイとみなされて殺されたという出来事が伝えられてきました。でも、今回の取材で分かったのは、現実はそれほど簡単に説明できる状況ではなかったということなんです」

 公開中の映画『沖縄スパイ戦史』は、米軍が進攻する沖縄に派遣された、陸軍中野学校でスパイ教育を受けた将校と島の人々との間で何が起きていたのかを証言から辿ったドキュメンタリーだ。取材に応えた三上智恵監督は、大矢英代監督とともに、丹念に生存者を尋ね歩いた。

「島に住む10代の少年で編成されたゲリラ部隊『護郷隊(ごきょうたい)』だったおじいさんは、私たちが想像を絶する世界、正気ではいられない状況を語ってくれました。他にも、逃げのびた先で疑心暗鬼から住民同士スパイではないかと対立を始めた様子を語る方もいました」

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 カメラを前に彼らが浮かべた怯えや戸惑いの表情からは、語り部のそれとはまた違う戦争の現実が伝わってくる。

「決して人には言えない事を心の底に沈めて70年を生きた方もいる。一滴のインクが水を染めるように、戦時、人間の心には人を疑う気持ちがジワリと広がる。その怖さを今こそ知ってほしいですね」

INFORMATION

『沖縄スパイ戦史』
ポレポレ東中野ほか、全国順次公開
http://www.spy-senshi.com/