「原作を執筆したのは1985年。九段下のホテルで“缶詰め”にされましてね。ベッド脇のサイドテーブルにある音楽専用ボタンを押したら、ムードミュージックが流れてきたのかな――。横になりながら作品の構想を練ったことを、いまでも思い出します」
それまで本格ミステリーを発表していた島田荘司さんが、若者のひたむきさ、危うさをモチーフに青春ミステリーとして書き上げたのが『夏、19歳の肖像』。2005年には新装版として生まれ変わり、さらに今年は映画が公開される。
「ひとつの作品でこういう体験は珍しいので、大変嬉しかったです。現場には国際色豊かなスタッフが集まりました。台湾人の監督チャン・ロンジー。主人公の青年は、中国人で韓国の人気グループEXOの元メンバー、ファン・ズータオ。青年が憧れるヒロインにヤン・ツァイユー。いわばオール・アジアのチームです。外国映画なのに解釈に誤りがなく、原作の精神は忠実に表現してもらえたと思います」
大学の夏休みにバイク事故で入院した青年が、退屈しのぎに病室から眺めた向かいの家。そこに住む女性に心を奪われた青年は、やがて彼女の秘密を目撃してしまう。
「本作のプロデューサーが“これはいつの時代、どこの国でも起こる物語”と語っていました。バイクでスピードを追求する、年上の女性に憧れる。若者から溢れ出る青春の香りは、そうやって醸されるのかもしれませんね」
INFORMATION
『夏、19歳の肖像』
8月25日よりシネマート新宿ほか、全国順次公開
https://www.maxam.jp/19/