(国内編から続く)
年末恒例の大アンケート企画。41回目の今年、国内では度肝を抜く「本格推理」の新人が、海外では「華文ミステリー」の新星が栄冠に輝いた。ベテランも大活躍の強力ランキング!
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投票の対象は発行日が2016年11月1日から2017年10月31日までの本です。1位は5点、以下、4点、3点、2点、1点として集計しました。海外部門の投票数は162でした。
アンケートにご回答頂いたのは全国の日本推理作家協会会員及びミステリー作家、文芸評論家、書店員、翻訳家、各大学ミステリー研究会他の皆様です。
〈国内部門〉
1.『13・67』(陳浩基 著)文藝春秋 212
2.『フロスト始末 上下』(R・D・ウィングフィールド 著)創元推理文庫 152
3.『湖畔荘 上下』(ケイト・モートン 著)東京創元社 133
4.『東の果て、夜へ』(ビル・ビバリー 著)ハヤカワ文庫 129
5.『その犬の歩むところ』(ボストン・テラン 著)文春文庫 69
6.『晩夏の墜落』(ノア・ホーリー 著)ハヤカワ・ポケット・ミステリ 53
7.『湖の男』(アーナルデュル・インドリダソン 著)東京創元社 51
8.『コードネーム・ヴェリティ』(エリザベス・ウェイン著)創元推理文庫 46
9.『紙片は告発する』(D・M・ディヴァイン 著)創元推理文庫 44
10.『シンパサイザー』(ヴィエト・タン・ウェン 著)早川書房 43
1. 『13・67』
香港社会の混乱と矛盾をありのままに活写した
緻密にして大胆な本格推理
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香港警察の伝説の名刑事クワンが活躍する事件簿で、2013年から、反英暴動が勃発した1967年へと遡る「逆年代記」の形をとる。
愛弟子ローの助けを借りて末期癌のクワンがYESとNOの意思表示で殺人事件を解決する「黒と白のあいだの真実」、アイドルの殺人事件がやくざ組織の対立を浮き彫りにする「任侠のジレンマ」、凶悪犯の脱走と消失を追及する「クワンのいちばん長い日」、警察の監視下、多数の死者が出た銃撃戦の真相に迫る「テミスの天秤」、誘拐事件の真実を解きあかす「借りた場所に」、そしてテロ阻止に奔走する「借りた時間に」の6篇による連作である。
台北国際ブックフェア賞など複数の文学賞を受賞。世界12カ国から翻訳のオファーを受け、ウォン・カーウァイ監督が映画化権を獲得した超話題作。
▼ここが魅力!
法月綸太郎「トリッキーな連作パズラー。2013年から1967年へ歴史をさかのぼる逆年代記形式が、最高の効果を上げている」
千街晶之「時代の激動と、普遍にして不変の警察官としての正義。社会派と本格ミステリーの稀有な融合」
大谷大学推理小説研究会「連作短編はどれも個性的で秀逸。香港産ミステリの圧倒的な存在感を見せつけた傑作」
立原透耶「社会的な問題と主人公の人生をおりまぜながら語られる骨太のミステリ」
小川誠一(マルサン書店仲見世店)「見事につながる短編の連続にシビレた。この作品でミステリー小説の進化は更に加速した」
宇田川拓也(ときわ書房本店)「本作を超える傑作には当分出会える気がしない。文句なしの1位」