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5.『その犬の歩むところ』

『その犬の歩むところ』(ボストン・テラン 著/田口俊樹 訳)

 暴風雨のある夜、ケンタッキーの裏道で、イラクから帰還した元アメリカ海兵隊員ディーン・ヒコックが、傷だらけの犬を見つける。ディーン自身、分隊ただひとりの生き残りで、心に深い傷をおい、目的を失っていた。そんな彼にとって犬との出会いは偶然ではなかった。それは詩のような運命のなせる業で、ヒコックが犬の命を救い、犬もまた彼の命を救ってくれた。

 犬の名前はギヴ。ギヴはアメリカ中を旅して、様々な人々に何ものかを与え、またギヴ自身も何ものかを与えられた。こうして存在そのものが生み出す奇蹟が語られる。

『神は銃弾』『音もなく少女は』の鬼才による数奇な運命の犬の物語。

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▼ここが魅力!

栗木さつき「アメリカ近代史のうねりを〈犬〉を通して描く一大サーガ。渾身の1冊」

関口晴生(トーハン)「今後アメリカの、世界の悲痛な出来事を聞くたび、この本とギヴのことを思い出すでしょう」

霞流一「天国に行った飼い犬とビールの泡を分け合った思い出がよみがえり、涙してしまいました。夜空の向こうにいる飼い犬に読み聞かせたい」

松本大介(さわや書店フェザン店)「朴訥と語るような文体に、感情が揺さぶられる」

天羽沙夜「ストーリーテラーとしてのボストン・テランの実力が光る名作」

6.『晩夏の墜落』

『晩夏の墜落』(ノア・ホーリー 著/川副智子 訳)

 晩夏の海にプライベートジェット機が墜落する。離陸からわずか18分。救難信号や警報を発した記録もなく、墜落の原因は特定できない状況だった。

 乗っていたのはニュース専門局をもつメディア王の家族以下11人で、助かったのはたまたま乗り合わせた画家のスコットとメディア王の4歳の息子のみ。飛行機には訴追直前の富豪も乗り合わせており、陰謀論がとびかい、スコットにも矛先が向かう。墜落の原因は何なのか。過熱するニュースショーとともに死者たちの人生が振り返られる。

“墜落前”(原題)の人生模様を丹念に追求する群像劇。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

▼ここが魅力!

川野京輔「さすが人気テレビ脚本家。最後まで引っ張り読み続けさせるストーリーテラーぶりに感服」

穂井田直美「要人を乗せた飛行機の墜落というセンセーショナルな事件の波紋を、広く丹念に描いた作品」

安達瑶「事故の原因究明が、そのまま複数の人物の心理に分け入っていく構成がスリリング。内面の省察が凄いです」

芹澤恵「ひとつの出来事に関係した幾人ものそれまでが語られることで、真相が少しずつ見えてくるところが魅力的」

後藤均「フェイクニュースの時代を象徴する傑作」