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7.『湖の男』

『湖の男』(アーナルデュル・インドリダソン 著/柳沢由実子 訳)

 アイスランドのレイキャヴィク近郊の湖の底から白骨死体が見つかる。頭蓋骨には穴があき、体にはソ連製の盗聴器が結び付けられていた。

 レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルは行方不明者を洗い、30年前に消えた農業機械のセールスマンにいきあたる。だが男は偽名を用い、記録は一切なかった。

 事件の推移を見守りながら、1人の男が1950年代の社会主義国家での青春時代を振り返る。男は何者で、事件とどう関わるのか。

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『湿地』『緑衣の女』『声』に続く犯罪捜査官エーレンデュルシリーズの第4弾。ヨーロッパミステリ大賞とバリー賞受賞作。

▼ここが魅力!

堂場瞬一「アイスランドの小さな事件が、戦後ヨーロッパ史の暗部に結びつく。スケールの大きさも相まって、このシリーズの最高傑作」

三浦天紗子「人の運命を翻弄したのが愛や家族といった事情ではなく、国家や時代というところにやりきれなさが」

仁賀克雄「巨匠らしい重厚な大作。東西冷戦当時の共産社会への憧れと失望が背景としてよく描かれている」

深水黎一郎「暗さや息苦しさがクセになる。事件そのものは地味だが、筆力があるので一気読み(徹夜)できました」

8.『コードネーム・ヴェリティ』

『コードネーム・ヴェリティ』(エリザベス・ウェイン著/吉澤康子 訳)

 第2次世界大戦時の1943年11月、イギリス特殊作戦執行部の女性部員「わたし」はナチス占領下のフランスで捕虜となる。彼女は尋問をやめる代わりに、イギリスに関わる様々な秘密情報を手記にするよう命じられる。

 インクと紙と2週間という時間を与えられた彼女は、親友の女性飛行士マディことマーガレット・ブロダットの足跡や彼女との出会い、共にフランス潜入計画に加わるまでの過程を小説のような筆致で綴っていくが……。

 ヒロインたちの青春劇を清々しい筆致で描くとともに、巧緻なプロットで読者を唸らせる戦争冒険ミステリー。

▼ここが魅力!

香山二三郎「諜報部員と飛行士と、女同士の熱い絆に落涙。巧みな構成にも感動必至」

緒川怜「女性同士の友情がみずみずしいタッチで描かれる第一部の手記が秀逸。手記にちりばめられた謎は最終的にすべて鮮やかに回収される」

坂木司「戦争に巻き込まれた二人の少女の物語。飛行機乗りの少女。草原を駆ける自転車。謎の手記。今年はこれ一冊で満足です」