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海外部門 第1位 著者に聞く――陳浩基

「ミステリー先進国」日本の諸作品から多くを学んだ

1975年生まれ。香港中文大学卒業。2011年『遺忘・刑警』で島田荘司推理小説賞、翌年『世界を売った男』の題名で邦訳刊行。 ©玉田誠

 今回の嬉しい知らせをいただいた時、私はシンガポール・ライターズ・フェスティバルに参加していました。その日はイギリスや地元シンガポールの著名なミステリー作家たちと、アジアとヨーロッパにおけるミステリーの作風の違いをテーマにディスカッションを行いました。仮に英国をヨーロッパにおけるミステリーの中心地とすれば、アジアの中心は日本ということになるでしょう。『シャーロック・ホームズの冒険』をきっかけにミステリーファンとなった私ですが、ミステリーを学ぶお手本とする対象は日本の諸作品でした。今日、私たちは翻訳を通じて様々な国の優れた作品を読み、イギリスや日本といった「先進国」の先達たちがあみだした創作技法を吸収することができます。

 拙作が日本語に翻訳され、日本の読者に読まれることは望外の喜びです。皆さん、香港発の華文ミステリーを手に取っていただき本当にありがとうございます。

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2.『フロスト始末 上下』

『フロスト始末 上下』(R・D・ウィングフィールド 著/芹澤恵 訳)

さよなら、フロスト警部。
超人気警察小説シリーズが作者逝去により閉幕

 慢性的に人手不足のデントン署では次々に仕事に追われる。大雨の森の中で人間の足首が見つかったというから、フロスト警部が出かけ、ビニール袋にいれて足首をもちかえると、今度は15歳の少女の強姦事件が待ちかまえている。そればかりではなく、別の少女の行方不明事件、そしてスーパー脅迫事件も起きて休む暇がなかった。

 そのうえに頭の痛い問題があった。デントン署に着任したばかりの厭味なスキナー主任警部とマレット署長が組んで、フロストをよその署に強制異動させるべく企んでいたのだ。しかも雲行き怪しく、フロストは絶体絶命の窮地にたたされてしまう。史上最大のピンチをどう切り抜ける?

 ベストテン常連の超人気警察小説シリーズ第6作。作者の逝去によりこれが最終作。

▼ここが魅力!

河内郁夫(大垣書店)「これで読みおさめ。笑えるミステリーシリーズ。今回も問題続出ですが、最終的には解決?!」

倉知淳「フロスト警部の活躍もこれで最後、というしんみりした気分など吹き飛ばす、いつもの勢いとパワーとお下品ギャグの連発」

土屋賢二「緊張感を出すには殺人の凄惨さが必要だ。暗さを逃れるにはユーモアが欲しい。絶妙のバランスを保っているこのシリーズの最終作も期待を裏切らない」

矢口誠「頭から尻尾まで、最高の面白さがぎっしりとつまっている」

森英俊「シリーズの掉尾を飾るのにふさわしい傑作。これほど絶体絶命に追い込まれたフロストも過去にはない」

郷原宏「長らく楽しませてもらった。作者のご冥福を祈る」