需要と供給をトゥギャザーせよ

 抹茶を作るためには、想像以上の時間と手間がかかります。新芽に直射日光が当たらないよう、覆いをして日陰で栽培し、手摘みをし、蒸して乾燥させ、茶葉にしたものを石臼で細かく挽く。たいへんな重労働で、苗を植えて最初の茶摘みまで最低でも5年はかかると言われます。茶農家の担い手も平均70代と高齢化しており、後継者不足という深刻な問題もある。加えて、ここ最近の異常気象ですから、ただ耕作面積を増やせば解決するわけではありません。

 需要増に応えるため、緑茶畑の8割をてん茶畑に転換した茶農家や、煎茶やほうじ茶の扱いを縮小したり、無くしたりする茶舗も出始めました。このまま売れ筋の抹茶だけが生産されるようになると、当たり前に飲んできたティーが、ある日突然、入手できなくなることもありえるのです。抹茶問題はティー道を学ぶ人だけでなく、日常的な文化の衰退という日本人全体にとって重大な問題でもあります。

 どうすれば茶農家の方々に利益を還元できるのか、どうすれば安定的に抹茶を生産できるのか。品質の保証、生産体制の見直しを業界のみならず、日本全体が真剣に考えないといけない時期がきているのです。

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 今後は、ほうじ茶や和紅茶など他の日本茶の魅力も積極的に発信していく必要があると考えています。抹茶だけに需要が集中しないよう、情報発信を工夫したり、茶殻をうまく処理する方法を考案したりしていくのはその第一歩かもしれません。抹茶をフォーエバーな文化にするためには「需要」と「供給」をトゥギャザーさせる必要があるのです。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。