新井薬師前にある「手打ち蕎麦 吉」が絶品の自家挽き・自家製麺(機械打ち)の国産二八そばを完成させた。そして、令和7(2025)年11月末に、手打ちそばと機械打ち大衆そばのハイブリッド店として業態を変更。平日(水~金)の夜と土日は従来通りの「手打ち蕎麦 吉」、平日(水~金)の昼は「国産二八そば スタンド」として機械打ちの二八そばと立ち食いそば的なお手頃な値段のメニューをそろえて営業する。

 今年5月に訪問した時、店主の立澤光太さんが「手打ちそばはこのまま続け、同時に機械打ちのそばや春菊天のような手打ちそば屋であまりみない天ぷらなども昼に提供してみたい」と語っていた夢が実現したのだ。

繊細なそばを提供してきた「手打ち蕎麦 吉」の業態変更

「手打ち蕎麦 吉」は今から12年前の平成25(2013)年に西荻窪で手打ちそばの店「そばとワイン 吉」として開業した店舗だ。

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 今年41歳になった立澤さんは日本各地のそば栽培農家に赴き、良質な抜き実のそばを仕入れる職人。製粉会社から仕入れておらず、そばは十割そばを打つ。

「手打ち蕎麦 吉」の絶品「もりそば」

 挽き、水回し、練り、伸し、切りをすべて自身の手で行い、状態を見極め、その都度調製している。そばは細身の繊細なタイプだ。

打ち立ての細身の十割そば

 立澤さんいわく「切磋琢磨している手打ちそば屋ならどこでもやっていること」だと謙遜する。

 一般に手打ちそば屋が値段を下げることは、御法度とされている。その理由は簡単だ。売り上げを上げたい→値段を下げる→質が下がる→味が落ちる→客数が減る→さらに値下げする、という悪循環に陥ってしまうからである。同時に、質の良いそばを仕入れるとか、出汁を開拓するといった向上心が薄れてしまうことが一番の問題ともいわれている。

 ではなぜ立澤さんはハイブリッドそば屋に業態変更したのだろうか。

 前回の取材でも触れたように、休みの日は買い出しの傍ら立ち食いそばを食べ歩いて日々研究に勤しんでいるという異色のそば打ち人。

立ち食いそばが大好きな立澤さん

 下町の立ち食いそば屋の雑然とした中、湯気の向こうで常連が食べる姿や店主が頑張っている姿をいつもみて、あこがれてきたという。

 しかし、業態変更の理由はそれだけではないという。SNSで質問してみたところ、「是非、一度食べに来てください。やってみて気が付いたことが多々あります」とのこと。そこで、さっそく訪問することにした。