クオリティの高い“機械打ち国産二八そば”を完成させられた理由

 私が食べ終えたのをみて、立澤さんが話し出した。初めは手打ちそばに近い味を作ろうとしたという。ところが、二八そばゆえ、手打ち十割そばとは違う。そこで機械打ちの良さで違いを引き出す方向に転換したそうだ。

「手打ちそばを熟知しているから、そう考えることができ、結果、とてもクオリティの高い自家挽き・自家製麺(機械打ち)の国産二八そばが完成した」と立澤さんは自負する。

 立澤さんに促されるように、奥にあるとても広い製麺室に案内された。そこにはピカピカに光った株式会社大和製作所の製麺機「坂東太郎」が鎮座していた。

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大和製作所の製麺機「坂東太郎」のピカピカの新品

 この製麺機は下で水回しと練り、上で伸しと切りができる工程に分かれていて、簡単にいうとそれぞれの工程は手打ちと同じようにそば打ち人が確認して調製することができ、手打ちで体力のかかる部分を補ってくれる機械だ。

 立澤さんは抜き実のそばを石臼で挽き、そば粉:八と小麦粉:二を合わせてそばを作る。その状態をみて、水回しの調節を行う。

水回しの機械
練りの機械

 製粉されたそば粉ではなく自分で挽いていたからこの見極めがうまくいくのだ。そして練りの強さ、伸しの太さやコシを調整し、切りはロールの速度で調整する。

上が伸しと切りの機械

 そうすることで十割と全く異なるコシのあるそばができるという。


クオリティの高いそばを作った結果、ある想いが湧いてきた

 しかし、「もりそば」「かけそば」500円は安すぎる。その考えをぶつけると粋な回答が速攻で返ってきた。立澤さんはクオリティの高い機械打ち二八そばを作った結果、次のような想いが湧いてきたという。

「国産二八そばの本当の味を手ごろな値段で食べてもらいたい。そして、本当のそば好きのすそ野を広げていきたい。それがワンコインだったら素敵でしょ。新井薬師前駅の工事現場で働く人たちにも是非食べに来てもらいたい。これが実は私の本当の目的です」

 今どきこんな殊勝なことを熱く語る青年はみたことがない。「うまくて安いそばは皆に平等に幸せを与えてくれる」という店主の心意気には本当に感心する。頭が下がる思いだ。そして、今年最大の朗報かもしれない。国産二八そばを使った絶品の自家挽き・自家製麺(機械打ち)のそばが誕生、しかも激安。このニュースはそば業界でも話題沸騰することは間違いない。