十代目店主の山岡さんと。

 店内には、吉田拓郎、忌野清志郎、泉谷しげる、奥田民生、斉藤和義といったミュージシャンとのコラボ扇子も飾ってある。さすが音楽好きの山岡さんらしいラインナップだ。そして、松本隆モデルは、扇面に松本さん直筆の歌のタイトルが入ったおしゃれなもの。「木綿のハンカチーフ」「夏なんです」「瑠璃色の地球」など、松本さん特有の味わい深い書き文字がいい。山岡さんは言う。

松本隆モデルの扇子。現在も販売中だ。

「扇子の起源は宮中で使われていた木の札なんですね。昔は、それに文字を書いて束ね、手紙代わりにして回していた。ですから、センセイの字が扇子にあるのは、“思いを乗せる”という意味で同じだと。普段、センセイとお話をしてると、言葉一つ一つが詩的だなと思うことがよくあるんです。たとえば、センセイはよく空を見上げるんです。そして、今日の空はこうだね、と言われる。ものすごくハッとしますね。ああ、ぼくは空を見てないな、気づいてなかったなって。センセイは人も風景も非常によく観察していらっしゃる。だからこそ、奥行きのある言葉で、詞を書くことができるんだと思うんです」

「ぼくの知的好奇心をくすぐってくれる、弟のような存在なんだ」

 そして左京区浄土寺にある名物書店「ホホホ座浄土寺店」へ。店主・山下賢二さんは、松本さんの京都ライフに欠かせない人物。山下さんは松本さんと交流しながら、その時々に松本さんが語った話を記録してまとめ『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』を二〇二一年に上梓、ベストセラーに。松本さんは言う。

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「山下くんは、ぼくの知的好奇心をくすぐってくれる、弟のような存在なんだ」

 店を訪れると、山下さんが「いまの松本さんにオススメしたい八冊」を選んでくれた。

山下さんオススメの八冊。

「一冊目は、台湾の漫画家・高妍の新作『隙間』。前作『緑の歌』ではっぴいえんどの『風をあつめて』や村上春樹さんの小説が登場することで話題になったので。二冊目は、編集者・岡本仁著『また旅2』。日本全国いろんなところを訪れた岡本さんの旅の記録です。