#1[「史上最悪の国会論戦」を動かした「ハーゲンダッツ」と「保守の知恵」]から続く

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「169歩」の距離にある与野党の国対委員長室

 国会議事堂の正面に向かって左側、衆議院の3階。赤絨毯の廊下を歩いていると、ドアが開くたびにタバコの臭いが漂ってくる部屋がある。「自由民主党国会對策委員長室」と書かれた古めかしい看板が掲げられた「第22控室」と呼ばれる一室が、マンモス与党の本拠地である。

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 対する衆院最大野党・立憲民主党の国対委員長が陣取るのは2階にある第2控室。国会開会中、本会議場を挟んで睨み合う位置にある2つの小部屋の前には、マスメディアの記者たちが常に待ち構えている。2階と3階をつなぐ32段の階段を入れて「169歩」(筆者調べ)の距離にある両陣営の間を、国対幹部の政治家たちが日夜せわしなく行き交っている。そうしているうちに国会論戦のメニューは決まる。

 働き方改革やTPP関連法、カジノ実施法など安倍政権が誇る政策実現力も、佐川宣寿前国税庁長官への証人喚問、柳瀬唯夫元首相秘書官への参考人招致など野党の「見せ場」も、そんな与野党国対の攻防戦によってもたらされた“戦利品”であった。

 1月からの182日間、その最前線に立っていた3人の「国対委員長」が振り返る超党派座談会。その後編をお送りしたい。

(司会・常井健一)

3人は、この座談会のために急遽選挙区から上京した

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国民民主党は「ゆ党」になるつもりはない

――徹底抗戦の立憲民主党、「脱抵抗」の国民民主党。野党の間で国会対応が分かれた場面もありました。

泉健太(国民民主党国対委員長) 細かな点も含めて全部一致するんだったら、今頃、同じ政党になってやっているわけです。やっぱり戦い方の違いはあるけれども、今の政権のおかしさ、不誠実さに真っ向勝負を挑むということで野党が結集している。

辻元清美(立憲民主党国対委員長) そうそう。

泉 ちょっと誤解を受けているけれども、5月の党首討論で、われわれの玉木雄一郎共同代表が森友・加計問題を扱わなかったのは「バランス」を考えた結果でした。我が党は予算委員会でモリカケを扱い、特別委員会の設置を要求してきた。一方で、党首討論では持ち時間が短いのでモリカケのような行きつ戻りつの議論をするよりも、党の主張が明確に伝わりやすいテーマを選ぼうということで、北方領土問題と通商問題を取り上げました。

 だから、国民民主党は「ゆ党」(野党でも与党でもない立場のこと)になるつもりもなければ、自民党に与するつもりもないです。5月の立党時に掲げた「対決より解決」というキャッチコピーも与党に擦り寄っているイメージがあるそうなので、実はその後、国対委員長記者会見で私は「与党と対決、国民に解決策」と修正しました。一番大事なのは、与党が仕掛けてくる分断工作には乗らないということです。

泉健太氏

古賀誠さんは「舞台にはト書きまで作ってから上がれ」

辻元 ああ、それはいいね。私は野党がひとつになるために、各党が納得するまで話し合うことを心掛けました。それぞれの事情があって、仕方ないことがたくさんある。各党が同じくらい忍耐して、「仕方ない度合い」をみんな同じくらい抱える。

 昔、自民党幹事長だった古賀誠さんが「舞台にはト書きまで作ってから上がれ」と教えてくれました。いきなり方針をぶち上げるのではなくて、相手と何度も交渉して、「これぐらい行けそうだな」というところが見えた上でテーブルに乗せるようでないと、なるものもならない。ですから、野党の国対委員長が一堂に集まっている最中に「その件について、今から自民党の感触を探りに行ってくるわ。ちょっとこのまま待ってて~」と言って、私が部屋を出て、自民党で探って、帰ってきたら「こんな感じ。どうする? このへんにする?」とかもう一度話し合う。部屋の外で待ち構えている報道陣は、私が何回も野党と自民党を往復しているのを不思議そうな顔をして見ている。記者に話をするのは、最後に方向性が決まってから。

辻元清美氏