追及する姿勢を貫いたことが大きい成果
辻元 野党議員の質問は、記者が取材で聞きたかった内容とも重なっている。あの場は記者クラブのメンバーに限らず、独立系のネットメディアやフリーのジャーナリストにも開放しました。彼らがリアルタイムでどんどん報じた。国民全体の関心事なので多くの国民にご自分で確かめてもらいたいので、膨大な資料も公開する判断をしました。そういう意味でも、ちょっと新しい手法だったと思います。
ただ、総理に直接問い質すべきことを官僚たちに執拗に投げかけるなど、的を射ない質問をする議員がいたことも確かです。議員の力量が問われました。
泉 しかし、あそこまで注目を浴びていながら、ちゃんとした委員会を開こうとしない与党が悪いと思うし、正しい情報を開示しようとしない役人たちに問題があったと思います。本来の委員会、国会の中で議論することを野党も望んでいました。
例えば、カジノ法案も、国会日程があと2週間あって定例日が4日分、7時間ずつやれば28時間も議論できたのに、与党が審議拒否をして3時間半しか議論できなかったんです。それを補うために野党ヒアリングをせねばという状態が生まれた。だから、あの手法は「与党による審議拒否」という異常事態が相次いでいる中での苦渋の選択でもあり、有効な手段でもあった。
玉城 やはり質量ともに国民に対しての説明が足りない中、真実を明かすことができたのは、各党がそれぞれのヒアリングをし、合同でヒアリングをし、各党に持ち帰り、党の中での話し合いもしっかりしたおかげで、委員会で突っ込めたからですよ。
あの手法は各党で濃淡や熱量の違いはあったとしても、私は続けて良かったと思います。なぜなら、われわれは野党だから。野党が政府に対して迫力を持って、追及する姿勢を貫いたことが大きい成果になっていると思っています。
自民党の二階幹事長を夜中まで国会内に「監禁」
泉 今国会のように公文書の隠ぺい、改ざん、ねつ造が相次いで、役所は「内部で調査をする」と言っていても、本当に最低限のことしかやりません。全然真相の解明につながらない。厚労省のデータ改ざんに対しては、野党の議員たちが夜を徹して直接データを一件ずつ検証しながら、おかしな点を見つけていくという作業をやったわけです。
役所が資料を誤って活用することによって、一国の総理が誤った認識を持ち、誤った発言をする。それによって誤った施策が展開されたら、恐ろしい結果が国民に降りかかるわけですよ。働き方改革の場合は、過労死が増えるかもしれないような制度が、総理の誤った認識や答弁のもとに実施されるかもしれなかった。それを止められたというのは非常に大きかったと思います。
辻元 国民民主党の山井和則さん、我が党の長妻昭さんらを始めとして、秘書も総出で検証作業をしたんだよね。その結果、安倍総理は「精査が必要なデータをもとに行った答弁は撤回をするとともに、おわびを申し上げたい」と謝罪したわけです。昨今、「野党は審議拒否ばかりする」というレッテル貼りがまかり通っていますが、あの時は先輩国対委員長たちから電話がかかってきて、「なんで、ここで国会を止めないんだ」と言われたくらい。でも、徹底的に審議で暴いたほうがいいということで、われわれは国会を止めなかった。
その結果、自民党の二階俊博幹事長を夜中まで国会内に「監禁」するというハプニングまで起きました。与野党幹事長会談が午前0時に及んでも、働き方改革関連法案の扱いをどうするか結論は出なかったわけですが、結論としては同法案から裁量労働制の適用拡大を切り離すことになりました。提出前の政府法案の中身を予算委員会の審議で変えさせたというのは、歴史上初めてじゃないかと思います。これは立法府として、行政府のチェックを果たした画期的な出来事でもありました。
「監禁」の翌日、自民党の森山委員長が立憲民主党の国対に来られて、「野党の予算審議には敬意を表します」と仰いました。自民党は当初、野党をなめてかかっていて、2月20日ぐらいに予算が通るだろうと踏んでいた。しかし、実際、野党はなかなか手ごわかった。