1944年に太平洋のペリリュー島(現・パラオ共和国)で日本軍とアメリカ軍の間で行われた「ペリリューの戦い」を丹念に調べ上げたうえで、あくまでフィクショナルな物語として今に伝える戦争漫画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(白泉社)が、このたび劇場版アニメ化されて12/5から全国の映画館で公開中だ。原作者の武田一義さんは、共同脚本という形で本作にも参加している。漫画をアニメ化するうえでの難しさや、銃後ではなく最前線を舞台にした戦争の物語を、今、アニメ映画として公開する意味について伺った。(全2回の1回目/2回目を読む

 

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 1944年9月、南北9km×東西3kmほどの小さな島・ペリリュー島に、4万人をゆうに超えるアメリカ軍が押し寄せてきた。迎え撃つのは、兵隊ではない軍属を入れてもたった1万人程度にしかならない日本軍。アメリカ軍は当初、その圧倒的戦力差から長くて4日で片がつくと見込んでいた。しかしその目論見は大きく外れ、最終的に日本軍が玉砕するまで抵抗は2カ月以上も続くことになる。

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 だが、戦いはそれで終わりではない。島の洞窟などに潜む敗残日本兵たちは、飢えや渇き、伝染病、あるいは日本兵同士の対立や分裂といった艱難辛苦を相手に、すでに戦争が終わったことを知らないまま2年半もの間にわたって奮闘せねばならなかったのだ。

 最終的に生き残った数は、たったの34人。あまりに語り部が少ないせいか「忘れられた戦い」と呼ばれることもあるという。

全11巻の原作を2時間に収めるのが大変だった

──武田さんは共同脚本という形で本作に関わっていますが、映画にするうえで何が大変でしたか?

武田一義(以下、武田) やっぱり本編だけでも単行本で全11巻のボリュームがある原作を、2時間以内に収めるのが大変でしたね。

 そこで「主人公の田丸の主観に絞っていこう」と一緒に共同脚本を務めた西村ジュンジさんから提案があり、それが基本的な方針になりました。したがって田丸がいないシーン、例えば日本軍の本部が玉砕するシーンや、東京大空襲といった日本が敗戦していく流れの描写などがなくなっています。

特技が漫画であることから、部隊の功績係(兵隊の遺族にいかに勇敢に散っていったかを美化して伝える係)を命じられた田丸均一等兵。