──基本的に田丸が見聞きしたことだけを残すことにしたと?

武田 そうすることで、田丸という一兵士が体験した戦いになる、という効果もあります。アメリカ軍との激戦の末に生き残り、わずかな仲間たちとともにペリリュー島内に隠れ潜んでいる田丸たちは、終戦後にアメリカ軍から投降を呼びかけられても日本が敗けたことを知りません。

 だから「本当に戦争は終わったのか? それともアメリカ軍の罠なのか……?」と疑心暗鬼になる当時の日本兵の気持ちに、より臨場感をもって感情移入できる効果もあるかもしれないと思ったんです。

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脚本が映像になったときの“尺感”の難しさ

──とくに映画館という空間では、田丸の目線により没入できそうですね。

武田 ですが、それでも2時間以内に収めることはもちろんできないので、いろんなエピソードをたくさん削っていきました。

 ただし、本当にあった戦争をテーマとして扱っている以上、史実には忠実でありたいと思って、ペリリュー島の生還者の方々が帰国するまでに、どのような経験を実際にしたのか? といった史実に則した部分は厚めに残しています。

──脚本を書くのはこれが初めてですか?

武田 はい、そうです。映画やアニメの脚本を書いたことがなかったので、脚本をこれくらい書いたら、だいたいこれくらいの映像になるという“尺感”がわからなくて苦労しました。

 最初に僕が書いた脚本は3時間ってプロデューサー陣に言われたんですよ(笑)。めちゃめちゃ削ったつもりだけど、まだそんなにあるのかとショックを受けました。

ペリリュー島を取れば、“4の字”に見える飛行場から日本が占領しているフィリピンへ爆撃機を飛ばせるという戦略的価値があった。