1944年に太平洋のペリリュー島(現・パラオ共和国)で日本軍とアメリカ軍の間で行われた「ペリリューの戦い」を丹念に調べ上げたうえで、あくまでフィクショナルな物語として今に伝える戦争漫画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(白泉社)が、このたび劇場版アニメ化されて12/5から全国の映画館で公開中だ。原作者・武田一義さんのインタビュー後編では、板垣李光人、中村倫也らアニメ版のキャスティングについて聞いた。(全2回の2回目/最初から読む

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最初からずっと第一希望だった板垣李光人さん

──主人公の田丸を担当した、板垣李光人さんの声の演技はいかがでしたか?

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武田 実は僕、初めから板垣さんに田丸の声をやってもらいたいと熱望してたんですよ。というのも、決してデキる兵隊ではなく、癒やしキャラみたいな存在の田丸ってすごく声が難しいなと思ってて、ずっと正解が見えなかったんですよね。

 どんなにシリアスな状況であっても、観ている人にどこか癒やしを与えてくれる声質の人っていないかなあ……と考えていた矢先、板垣さんの個人のYouTubeを観たんです。たしかパンがメインの料理動画だったかな? それがまさに、自分がおぼろげにイメージしてた田丸の声そのもので、もう板垣さんしかいない! と。

 しかも、たまたまプロデューサーさんも候補者として板垣さんを考えていて、ぜひ板垣さんで進めてほしい! とお願いした経緯があったので、実際に決まったときはもう本当にうれしかったですね。声を当ててもらった瞬間「ああ、田丸がいるな……」って……。

──本当にうれしかったことが伝わってきます。主人公の戦友・吉敷を演じた中村倫也さんはいかがでしたか?

武田 正直な話、僕は吉敷っていうキャラクターは、田丸ほど難しくないと最初は思ってたんですよ。実力のある方であれば、誰がやってもその方なりの吉敷になってくれるだろうと。ところが中村さんの吉敷を聞いたときに、すごくハッとさせられたんですね。

 吉敷は田丸と対照的で、勇猛で強くてかっこいい兵士だと思うんですけど、でも中村さんの吉敷はかっこよさばかりを前面に出していない。もし戦争に来てなかったら、地元の茨城県の田舎で家業の米農家をやっていて、吉敷家の頼れるお兄ちゃんとしてお母さんと妹と3人で暮らしていたんだろうな……と思えるような、穏やかで素朴な吉敷の素顔が中村さんのあの温かい声の中に見えてきました。

勇敢で勘も冴えていて、第一線の兵士として非常に優秀な吉敷佳助上等兵。だが戦場において人命を奪うことに葛藤する優しさもある。