──原作は戦場のリアルをありのままに伝えようとする姿勢を感じましたが、あの独特の可愛らしいキャラクターデザインが緩衝材のようになって、残酷さを和らげていたように思います。
武田 まさにその“緩衝材”を意識して、僕も漫画を描いていました。凄惨な出来事ばっかりでは読むのも辛くなってしまうかもしれないので、ちゃんと感情移入して読んでもらうために、この3頭身のキャラクター造形にしたんです。
作り手側の思いとしては、戦争のリアルを描くんだけども決してマニアックすぎないように注意しつつ、小学校の高学年くらいの子が初めて戦争の物語を見るときの入口になりうる作品を目指しています。もちろん、全年齢向けではあるんですけど。
映画でこの物語に興味を持ってくれた人は、次は原作の漫画に進んでほしいし、さらにその先には史実の戦争があるっていうことを意識してもらえたらなと思っています。
たけだ・かずよし 漫画家。1975年生まれ、北海道岩見沢市出身。2012年に精巣腫瘍の治療体験をテーマにした『さよならタマちゃん』でデビュー。2016年から白泉社「ヤングアニマル」誌で『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』を連載開始し、2017年に日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。
『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』
漫画家志望の21歳の陸軍一等兵・田丸はその才能を上官に買われて、部隊の“功績係”に任じられる。運悪くぬかるみですべって転んで頭を打って亡くなった仲間の最期も、田丸によって敵兵相手に勇猛果敢に戦った末に散華したという美談に仕立て上げられ、遺族に知らせるという役回りだ。
しかし、そんなある日、ついにアメリカ軍が島に上陸する。田丸は同い年の陸軍上等兵・吉敷らとともに最前線の陣地でアメリカ兵を迎え撃つが、圧倒的な戦力差により瞬く間に蹂躙されてしまう。
司令部から玉砕を禁じられ、持久戦に徹するよう命じられる田丸たち。しかし、持久しようにもそのための食料がない。水すらない。口々に「早く死にたい」と呻く負傷兵たち。そんな死ぬに死ねない地獄の底のような世界で、田丸は吉敷とともに日本への生還を誓い合う。
同じ味方とはいえ、極限状態の中で剥き出しになるそれぞれの人間性。そんな人々との潜伏生活が2年半も続くと、もはや誰と何のために戦っているのかわからなくなってしまう。戦争のリアルがここにある。
監督:久慈悟郎/原作:武田一義/脚本:西村ジュンジ、武田一義/声の出演:板垣李光人、中村倫也、天野宏郷、藤井雄太、茂木たかまさ、三上瑛士/制作会社:シンエイ動画×冨嶽/日本/2025/104分/配給:東映/©武田一義・白泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会
